前回の記事で書いたようにサン電子(6736)はゲームソフトを含めた様々なビジネスを行っています。その中でここ数年の成長事業がイスラエル子会社「セレブライト」社を中心とするモバイルデータソリューション事業でした。「セレブライト」社はモバイル端末向けの犯罪捜査ソリューションの世界的なリーディングカンパニーで、特に犯罪の証拠となるスマートフォンの情報解析に定評のある会社です。

たとえば、ロックされているiPhoneのロックを解除し、中にある証拠を確認することはiPhoneのセキュリティが強固なため簡単ではありません。しかし、同社はそのiPhoneロックを解除する技術を有しているとされています。2016年には国際刑事警察機構(インターポール)とサポート契約を結んでいるほどです。

ビジネスの内容上、詳しい情報は分かりませんが、報道等では米FBIや日本の警視庁などともビジネスを行っており、テロリストのスマートフォンの解析も行っているとのことです。そういう捜査の実情はまったく分からないですが、犯罪やその捜査においてスマートフォンの存在が大きくなっており、その解析の価値が増しているのは容易に想像できます。

事実、サン電子のモバイルデータソリューション事業は2016年3月期には売上が約120億円でしたが2019年3月期には約184億円に増加しています。利益については上下変動がありますが、売上規模でも成長度合いでも堂々の主要事業です。

一方、同社はもともとパチンコ関係のビジネスが主力で2016年3月期にはホールシステムと遊技台部品で約96億円の売上がありました。それが2019年3月期にはエンターテイメント関連で約53億円に縮小してしまっています。モバイルデータソリューション事業とは対照的です。

結果的にモバイルデータソリューション事業のような成長事業を抱えながらもサン電子全体では2016年3月期から2019年3月期にかけて売上が約229億円から252億円にしか成長しておらず、2018年3月期・2019年3月期はいずれも営業赤字、2020年3月期も営業赤字予想と厳しい業績です。株価も2015年1月には一時2,000円を超えていたのが2015年10月には1,000円を割り込み、2019年春までほぼ1,000円以下の水準が続いています。

その流れが変わったのが2019年3月のアクティビスト、オアシスマネジメントによる大量保有報告でした。同ファンドは9.21%の保有比率で重要提案行為を行うことがあるとして、サン電子株式の大量保有を届け出たのです。

オアシスはサン電子が保有するセレブライトの株式の価値を1,500億円超としています。サン電子の時価総額は300-400億円程度で推移していることを考えるととてつもない価値と言えるでしょう。また、2017年3月期から2020年3月期まで4期連続の最終赤字になっている点も指摘し、オアシスが経営協力することでサン電子の価値を増せると訴えたのです。両者の対決は2020年4月8日に実施された臨時株主総会が舞台となりました。