市場における過度な「期待」「失望」、新たな「期待」
先週の米ドル/円は、週初の3月9日に一時101.17円まで大幅に下落したかと思えば、週末の13日にかけては108円台まで大きく値を戻すという非常に荒い値動きになりました。
その背景にあったのは、市場における過度な「期待」と「失望」、そして新たな「期待」です。1つの「失望」は、3月6日に行われた石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど非加盟国との閣僚会合で減産協議が決裂したことでした。結果、原油価格が急落したことで投資家心理が凍りつき、市場は一気にリスク回避ムード一色となったわけです。
前日に行われたOPECの臨時総会で追加減産案の合意がなされたことにより、ロシアの協調にいくばくかの「期待」もあっただけに市場の「失望」は相当に大きかったものと察せられます。
結果、米ドル/円は3月9日に一時101.17円まで大幅下落し、この日の日足ロウソクは下ヒゲを伴う格好となってNYクローズまでには安値から1円以上値を戻す展開となりました。それは一時的な下げ過ぎの反動もあったのでしょう。
また、同日の安値が2016年11月9日(前回の米大統領選でトランプ氏の勝利が明らかになった日)の安値とピタリ一致する水準であったことが意識されて下げ止まったと見る向きも、実のところは少なくありません。よって、今後も101.17円処という水準が市場で意識される場面はあり得るものと心得ておく必要はあると思われます。
なお、翌3月10日にはトランプ米大統領が給与税免除の可能性について言及したことでNYダウ平均が1,000ドル超上昇し、それを受けて米ドル/円が106円手前まで大きく値を戻す場面もありました。市場は、過度なまでに政策への「期待」を膨らませたわけですが、それはほどなく「失望」に転じ、結果的に3月11日と3月12日の僅か2日間でNYダウ平均が3,817ドルも下落するという一種のパニックが生じてしまうこととなりました。
連日の米株価急落は政策催促の相場ともいえる
今にして思えば、連日の米株価急落は政策催促相場の様相を呈していたと見ることもできます。その実、米政権は3月13日に慌てて「国家非常事態」を宣言し、同時に、トランプ米大統領は野党・民主党が策定した数10億ドル規模の経済対策法案を承認しました。
とりあえず民主党に花を持たせることで、自身が熱望する大型減税に道を拓きたいとの思いがあるのでしょう。むろん、減税は選挙対策の意味合いが強いことも否定できません。
ともあれ、市場では米政権による巨額減税実施への「期待」が再び膨らみ始め、3月13日のNYダウ平均は1,985ドル高。米株高を受けて米ドル/円は一時108.50円まで値を戻す場面がありました。ここで1つの焦点となるのは、果たして8,000億ドル規模にもなる巨額減税が本当に実現できるのかということです。
今度ばかりは、それが「失望」に転じないことを祈りたいところですが、仮に実現されるとしても既に市場は織り込み済みで一旦は「材料出尽くし」となる可能性もあり、なおも警戒は怠りなくしておきたいところです。
緊急の日銀政策会合やG7電話会議などがあるとされるが…
既知のとおり、米連邦準備制度理事会(FRB)は日本時間の今朝6時頃、1%の緊急利下げ実施と量的緩和の再開を決定しました。それにもかかわらず、時間外のNYダウ先物価格が大幅下落の反応を示したこともあって、米ドル/円は一時的にも再び106円割れの水準を試す場面を垣間見ています。
「大幅利下げでドル安」ということならいいのですが、むしろ米金融政策に対する「踏み込み不足感」あるいは「出尽くし感」などがそこにあるとするならば、まだまだ市場のパニック状態は収まらないものと見られます。
本日(3月16日)は、緊急開催の日銀政策会合や主要7ヶ国(G7)電話会議などのイベントが控えているとされ、まだまだ波乱含みの状態は続きます。今後も何が起こるかわからないうえ、起こったことに対する市場の反応も想定外であることが少なくありません。
よって、基本的には今後の状況をじっくり見定めながら様子見に徹し、チャンス到来のときを焦らず待つのが賢明ということになるでしょう。