先日京都の町を歩いている時に、沈丁花の香りが鼻をつきました。二十四節気では、今は立春と啓蟄に挟まれた雨水です。春の兆しを一番感じるのは雨水の頃かも知れません。小さい頃に住んでいた家に、沈丁花が植わっていました。
「人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける」(古今集春歌上 紀貫之)
昔から変わらぬ花の香りが、心をあの頃に連れ戻します。歌の本来の意味は、想いを馳せる相手の心が変わっただろうか、と詠んでいるのだと思いますが、私には、自分の心があの頃に戻っていく道程を表しているようにも思えます。自分の心は変わっているようで、戻っていく場所は同じであり、実は変わっていない。そんな歌にも思えます。
原点を大切にしていきたいと思います。