2つの点で「起こらなかったことが起こった」
2月19日、米ドル/円は109円台後半から一時111円半ばまで急騰した。ユーロ/米ドルは1.08ドル前後での一進一退となったので、米ドル急騰というより、本質的には円の急落ということだっただろう。ではなぜ、円急落が起こったのか。
それは、これまで「起こらなかったことが起こった」影響が大きかったのではないか。特に私は、テクニカルな2つの点に注目している。その1つが、今年初めて米ドル/円は戻り高値を更新したということだ。
今年の米ドル/円は、米イラン関係の緊張懸念から一時107.6円まで急落、そしてその懸念が後退すると110.2円まで反発した。その後「新型肺炎」への懸念から下落再燃となったものの、108.3円までにとどまりイラン・ショックの安値更新には至らなかった。そして「新型肺炎」懸念後退で反発しても、その前の高値、110.2円には届かなかった(図表1参照)。
このような値幅の狭小化は、ここ数年の米ドル/円プライス・パターンの1つの特徴だった。その意味では、2月19日、110.2円を上回ったところで、このプライス・パターンは崩れた。年明け以降「起こらなかったことが起こった」ことから、あまりないほどの米ドル/円急騰が起こったということではないか。
上述のように、値幅の狭小化は2015年頃から続いてきたものだ。「上がっても前回高値を超えられず、下がっても前回安値を割れず」といったプライス・パターンが続いた結果、2015年以降の米ドル/円の高値-高値、安値-安値のトレンドラインは、ほとんどクロスしそうなくらい接近した。
そしてこのトレンドラインのうち、高値-高値のトレンドラインを2月19日上回った(図表2参照)。ここ数年「起こらなかったことが起こった」ことから、あまりないほどの米ドル/円急騰になったということではないか。
後者は、チャート的には、長期三角保ち合いの上放れとみることもできる。経験的には、その場合は保ち合いスタート水準まで戻る動きの始まりの可能性がある。保ち合いスタートの米ドル/円上限は、2015年6月の125円。その意味では、2月19日の米ドル/円急騰は、120円超に向かう米ドル高・円安の始まりの可能性も注目されるだろう。