1999年2月の日銀ゼロ金利政策と今週の中国大規模資金供給

昨年、米国株が夏にかけて一時崩れると、FOMC(米連邦公開市場委員会)は3回連続で「保険的利下げ」を行い、その中で米国株は上昇基調に戻ると、最高値更新に向かった。この「保険的利下げ」について、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は1998年の金融政策を参考にしたとこれまで何度か述べてきた

参考にしただけあり、夏場に崩れかけた米国株が、「保険的利下げ」をきっかけに上昇基調に戻り、最高値更新に向かった動きも、1998年は昨年と似ていた(図表1参照)。ここまで似てきたのだから、この先もしばらく似た動きが続くなら、2020年の米国株は1999年の動きが参考になりそうだと、私はこれまで考えてきた。

【図表1】2019年以降のNYダウと1998~1999年のNYダウ
出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

その1999年の米国株は、じつは年明けからはしばらく冴えない状況が続いた。しかし2月中旬頃から勢いよく一段高に向かうところとなった。ではなぜ「2月中旬」だったのか。

1999年2月12日に、日銀は先進国史上初のゼロ金利政策を決定した。日本の株価はまさにこれを境に急上昇に向かった。その意味では、上述のように米国株も、1999年2月中旬から一段高へ向かったのは、日銀による「究極の金融緩和」、ゼロ金利政策が間接的に影響したということだったのではないか。

歴史的にみると、1999年という年は、ITバブルがクライマックスに向かった年だった。そんな世界的な株一段高において、日銀のゼロ金利政策決定は、最後に背中を押す役割になったのではないか。

さて、そんな1999年の株価の動きと、2020年が比較的似た状況にあるなら、今回「新型肺炎ショック」を受けて、中国の金融当局が今週から大規模な資金供給に動いていることは、1999年における日銀ゼロ金利政策に似た位置付けになる可能性は注目される。

ところで、過去半年の米ドル/円はNYダウと似た動きが続き、そのNYダウはこれまでも述べてきたように1998年以降の動きと比較的似た状況が続いてきた。この関係がこの先も続くなら、米ドル/円のこの先の行方は、1999年のNYダウが参考になる(図表2参照)。それによると、米ドル/円は3月に111円、そして5月に113円に向かう見通しになるが、果たしてどうか?

【図表2】2019年7月以降の米ドル/円と1998年7月~1999年のNYダウ
出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成