米国株とドルは春節明け前の先週末に一旦手仕舞いか
先週1月31日、それまで意外なほど底堅い推移を続けていた米国株とドルが一気に大きく値を下げる展開となりました。
その前日(30日)は、世界保健機関(WHO)によって新型コロナウイルスを対象とする「緊急事態宣言」がなされ、むしろ「ひとまず安心」とのムードも漂っていたようです。しかし、なおも足下で感染者と死者の数が増加し続けている実情を鑑みれば、さすがに「一部にあった楽観もあえなく消え失せて当然」といった状況になってきている模様です。
もっとも、先週1月31日は週末であると同時に月末でもあったことから、とりあえず手持ちのポジションを一旦手仕舞っておこうとする向きも少なくなかったものと推察されます。加えて、週明け2月3日(本日)に上海市場が春節休暇明けで再開され、一旦は大きく相場が下押す可能性もあるという警戒心から、先週末のうちにポジションを整理しておく動きが一部に出たということもあるでしょう。
ユーロ/米ドルは基本弱気とみる
そうした意味では、先週末にユーロ/米ドルが一旦大きく値を戻す動きとなったことに関しても、あくまでポジション調整に伴ってユーロを買い戻す一時的な動きと捉えることもできるように思われます。
なにしろ、足下のユーロ圏経済は依然として停滞が続いている模様です。欧州連合(EU)が先週1月31日に発表した、10~12月期のユーロ圏実質GDP(速報値)も前期比+0.1%(年率換算+0.4%)と、非常に心もとない結果に終わりました。
なお、同日公表されたフランスとイタリアの実質GDPはともにマイナス成長という結果になり、そのことが全体を押し下げる要因として大きかったと見られています。
肝心のドイツGDPは2月14日に公表される予定です。しかしながら、昨今のドイツでは製造業を中心に時間短縮勤務を導入する企業が増え続け、受注激減と生産調整の傾向が一段と強まってきているとの報もあり、今しばらくは期待外れな状況が続くものと見られます。
そうであるとするならば、やはりユーロ/米ドルの戻りは一旦売りということになります。目先は日足チャート上の21日移動平均線と一目均衡表の日足「雲」下限、ならびに週足チャート上の31週移動平均線(31週線)が、ともに現在位置している1.1100ドル処というのは1つの節目=上値抵抗として意識されやすいところではあると言えるでしょう。
仮に、この31週線を上抜けたとしても、その上方に控える62週移動平均線や週足「雲」のプレッシャーは重くのしかかります。
つまり、依然としてユーロ/米ドルが基本弱気であるとするなら、逆にドル指数は基本強気ということになり、それは米ドル/円の底堅さにつながるものでもあると考えることができるでしょう。
目先を言えば、まず米ドル/円の200日移動平均線(執筆時は108.42円)が下値を支える役割を果たすかどうかに要注目です。仮に同線をクリアに下抜けた場合は、一目均衡表の週足「雲」下限(執筆時は107.95円)を試すかどうかが次の焦点です。
新型肺炎には「正しく恐れる」姿勢で臨むことが重要
既知のとおり、中国人民銀行(中央銀行)など金融当局は2月1日、湖北省の小売業や飲食業を中心に企業や個人向けの金融支援策を発表しました。人民銀行は、2月3日に債券を担保として1兆2000億元(約18兆7000億円)を金融機関に貸し出すとアナウンスしています。
この報を受けて時間外の米国先物は強含みの推移となっている模様です。本稿執筆中に上海総合株は大幅下げとなっていますが、市場に極端な動揺は見られていません。やはり、ここは月並みですが「正しく恐れる」という姿勢で臨むことが重要と言えるでしょう。