・米上院銀行委員会が16日(日本時間17日未明)、フェイスブックによる暗号資産Libra(リブラ)に関する公聴会を開催。懐疑的な質問が相次ぎ、リブラの発行は当初の2020年から遅れる見通しとなった。ビットコインは急落、7月以降の上昇分を打ち消し、1万ドルを割りこんだ。
・主な質問は、フェイスブックの個人情報管理への懸念、マネーロンダリング対策への不安、スイスの金融監督下とすることは米規制逃れではとの疑惑、国の通貨発行権や金融政策への影響など。
・15日にはIMFもリブラには国際規制が必要と発表。これだけの議論になっていること自体がデジタル通貨が金融を変える可能性を示す。リブラが万一頓挫しても、同様の資産が誕生するだろう。
・先週のビットポイントの不正流出事件も重石で、17~18日にはG7でも議題。いずれにせよ6月後半以降のビットコインの上昇は急過ぎで調整は想定内。金融緩和の影響で同様に上昇してきた金との相関からも下げ過ぎ感。富裕層や機関投資家等参加者も拡大しており再浮上は十分可能。
フェイスブックの暗号資産リブラに関わる公聴会開催
米上院銀行委員会が、16日(日本時間17日未明)、フェイスブックによる暗号資産Libra(リブラ)に関する公聴会を開催した。
公聴会に先立ち、フェイスブックは、冒頭陳述の内容を公開しており、リブラがフェイスブックではなく参加企業の連合であるリブラ協会が行うことや、すべての規制条件を満たし、認可されない限り発行しないことなどを明らかにしていた。
本番の公聴会では、極めて厳しい質問が相次いだ。主な質問としては、フェイスブックの個人情報管理への懸念、マネーロンダリング対策への不安、スイスの金融監督下とすることは米規制逃れではとの疑惑、国の通貨発行権や金融政策への影響など多岐に及んだ。全般に、暗号資産自体への否定的な内容よりも、むしろ、リブラの運営や、フェイスブックのこれまでの顧客情報管理などに対する懸念が大きかった印象である。
これらの議論により、当初2020年としていたリブラの発行予定は遅れる可能性が高くなった。
一連の報道から、ビットコインを始めとする各種暗号資産は軒並み前日比2桁の下落となっている。ビットコインは7月以降の上昇分を打ち消し、1万ドルを割りこんで推移している(図表1)。
リブラを巡る各種米当局の反応は厳しい。先週は、FOMC後の記者会見で米FRBパウエル議長がリブラへの懸念を表明すると、トランプ大統領も「地位も信頼性もない」と批判、次いでムニューシン財務長官もマネーロンダリングに使われる懸念があるとして安全保障上の問題を指摘した。また、国際機関では、15日にIMFもリブラには国際規制が必要と述べた。
しかし、これだけ大きな議論になっていること自体が、リブラなどの暗号資産が金融を変える大きな流れとなる可能性を示しているといえるだろう。
今後の見通し:復活の可能性も十分ある
米上院に続き、17日には米下院金融サービス委員会でも公聴会が開催される。また、17~18日にはG7財務大臣中央銀行総裁会議(@フランス・シャンティイ)でも、リブラに関する課題の整理やどのように規制すべきか、などが議題に上る予定である。議論の方向性としては、16日の米上院の議論と同様とみられることから、市場への影響は限定的となるだろう。
これらは、金融緩和の影響に加え、リブラ期待が主因となった6月後半以降のビットコインの上昇分(約9,100ドル→最高値は約13,000ドル)を打ち消した。先週発生したビットポイントの30億円超の不正流出事件も重石となっている。
もっとも、6月後半の暴騰は、一時17年末に並ぶ勢いだったことから、そもそも“スピード違反”で、価格の調整はある程度想定されていた(19/6/27付「ビットコイン、一時150万円をうかがう。上昇はどこまで続くのか?」参照)。
それでも、富裕層や機関投資家等、市場参加者の顔ぶれは改善しており、かつ、投資家には4月以降の復活の記憶が焼き付けられた。昨年よりは下値で参加する投資家層が広がっていると思われる。
また、このところのビットコイン価格上昇は、金融緩和により上昇していた金価格とほぼ足並みを揃えてきたが、その流れからしても、今回のビットコインの動きは下げ過ぎにも見える(図表3)。
仮にリブラが規制の壁にぶち当たり頓挫したとしても、なんらかの形で同様の暗号資産の試みが登場するだろう。過去にも、ビットコインの価格と暗号資産の口座数には緩やかな正の相関があった。仮に、プラットフォーマーが参画することで利用者が拡大すれば(またはその期待が高まれば)、再び暗号資産の価格は上昇へと向かうだろう。ビットコイン価格の再度の浮上は十分可能であると考える。