・暗号資産の上昇が続いている。ビットコインは140万円台にのせ一時150万円近くまで上昇。先週末からの上げ幅は40%に。フェイスブックのLibra、米CFTCの先物業者承認等が材料となっている。
・現在の上昇ペースには行き過ぎ感もあるが、実は、金価格の上昇よりも若干早い程度。暗号資産の新規性や、ユーザーベースの拡大期待を考えると、その差にもさほど違和感はない。
・前回の17年末~18年初頭の上げ局面と比較してみると、今回の上昇ピッチは前回と酷似している。前回の最高値は、現値から40%高い18,670ドル=200万円。
・一方、システム、FBの議論、週末のG20等への懸念も根強く、価格はどこかで調整する可能性が高い。それでも、富裕層や機関投資家等、市場参加者の顔ぶれは改善しており、かつ、投資家には今回の復活の記憶が焼き付けられた。調整があっても比較的短期に留まる可能性が高いだろう。

暗号資産の上昇が続く:140万円台乗せ

暗号資産価格の上昇が続いている。先週金曜日にも上昇ぶりをレポートしたが(19/6/21付「ビットコイン=100万円の次の節目は1万ドル」参照)、その時点から本日までにビットコインは約4割も上昇した(図表1-1)。価格は140万円台に乗せ、一時は150ま万円を窺う展開となった。年初から本日までの半年で、ビットコインの価格は3.5倍となった。一時低下していた取引量も、足元では持ち直している(図表1-2)。

 


市場の力強さの要因として、フェイスブックのLibra構想や、米CFTCが暗号資産デリバティブ業者LedgerXにビットコイン先物商品上場のライセンスを与えたことなどが挙げられる。

上値メドは?:前回の上昇局面のピッチでいけばあと40%の余地があるが…

ビットコインの現在の上昇ペースには行き過ぎ感が強い。しかし、実は、金価格と比べてみると、それほど突出して急ピッチなわけではない(図表2)。足元では、ややビットコインの上昇ペースが上がっているが、これは、暗号資産の新規性やフェイスブックを始めとする新規参入への期待を考えれば、それほど不自然ではないだろう。 

 

では、上昇はどこまで続くのだろうか。このような相場は思惑次第であり、上値のメドを考えるのは難しい。一つの目安として、前回の上昇局面である17年末~18年初頭と比較してみると、今回の上昇のピッチは極めて似ていることがわかる(図表3)。

 

この上昇ペースを維持するとしたら、前回の最高値18,670ドル=200万円に近づく可能性もあながち否定できない。その場合、現値から40%の上値余地があるということになる。

更に、前回に比べて、市場参入者の顔ぶれは大幅に改善している。Libra参加メンバーの豪華さは、そのまま世界の企業の暗号資産への関心の高さを示している。たとえLibraが米国で否認されても、早晩、類似の取り組みが世界のどこかで出てくるだろう。

加えて、富裕層や機関投資家の参入も拡大している模様だ。機関投資家向けの暗号資産運用会社Grayscaleによれば、2019年1-3月期の資金流入額は前四半期比42%増加した。その後、同社の代表ファンドの出来高が急上昇していることからも、機関投資家等の適格投資家による投資が増加していることがうかがえる。

懸念も根強く、調整を挟む可能性大:それでも一定の買いは入る市場になっている

一方、懸念も根強い。6月27日未明(日本時間)には、ビットコインが15分間に1,700ドル以上急落し、大手交換業者Coinbaseが一時アクセス不能になるというシステム・トラブルが発生した。その後価格が弱含んだことからも、市場がシステムに対する強い不安を抱いていることを表している。

更に、フェイスブックのLibraを巡る議論の行方や、週末のG20などの不透明感もある。それでも、昨年後半の安値からの復活を目の当たりにした投資家には今回の急上昇の残像が残る。次の下げ局面でも十分買いが入ると考えられる。このため、今後価格が一旦調整したとしても、比較的短期間に留まる可能性が高く、調整局面は良い買い場となりうるだろう。