今週の相場動向

相場回顧 BTC:強い買いトレンドが継続し、一時BTC=150万円(14,000ドル)に迫る

BTCは強い買いトレンドが継続しBTC=108万円(10,000ドル)を難なく突破。一時BTC=150万円(14,000ドル)付近まで価格を伸ばし、その後急落したが、週足では約25%の大幅上昇となった。

価格上昇の勢いが止まらない。これはBinanceが米国をサービス対象外にして以降BTC集中の流れが強まったこと、グローバルマーケットにおける情勢不安により逃避資金が流入していること、FacebookのLibraプロジェクトが各国大手メディアに取り上げられたこと、LedgerXのBitcoin先物提供が認可されたことなど複合的な要因が考えられる。また、多くの投資家が調整局面を予想しショートが積み上がっていたが、予想以上の強い動きにマージンコールが働いて相場が押し上げられたとの見方もある。

注目されたFATFガイドラインは、業者間の顧客情報管理・授受を厳格化する内容であったが、相場への影響なく通過した。

今週のトピックス

  • 金融庁がフィスコ仮想通貨取引所に対し業務改善命令。(6/21)
  • FATFが暗号資産に関する新ガイドラインを公表。(6/21)
  • 金融庁が暗号資産交換業者に関する事務ガイドラインの一部改正案を発表。(6/21)
  • Bitmainが米国でのIPOを計画か、Bloomberg報道。(6/21)
  • ETH開発者会議にて次期大型アップデート「Istanbul」に関する2つのEIPが承認。(6/21)
  • xRapidを実装したフィリピン向け送金サービスSendFriendが米国で稼働開始。(6/23)
  • 国際決済銀行(BIS)が年次経済レポートを公表。(6/23)
  • 米国下院金融サービス委員会が上院銀行委員会に続きLibraに関する公聴会を行うと発表。(6/24)
  • BinanceがBinance Chain基盤のステーブルコインUSDSBとUSDS,USDTの取引ペアを追加。(6/24)
  • 日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)が1年間の理事任期満了につき新たな理事を選任。(6/24)
  • リミックスポイントが東大発のブロックチェーン関連スタートアップ企業のDaisyへ出資。(6/25)
  • 米国商品先物取引委員会(CFTC)がLedgerXに対し現物受け渡しのBitcoin先物提供を許可。(6/25)
  • JP MorganがJPコインのパイロットテストを年末にも開始か、Bloomberg報道。(6/25)
  • 金融庁が無登録交換業者Cielo EX Ltd.に警告。(6/25)
  • 日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)が自主規制規則に関するパブリックコメントの募集を開始。(6/25)
  • ウォルマート中国がVechain上に商品追跡プラットフォームを構築。(6/25)
  • 金融安定理事会(FSB)がG20各国首脳に向けて送った書簡を公表。(6/25)
  • 機関投資家による暗号資産取引量が1年前と比べて2,3倍に増加、CNBC報道。(6/25)
  • 米決済企業Squareが送金アプリ「Cash App」でBitcoinの入金サービスを開始。(6/26)
  • chaintopeがマレーシア子会社を通じてブロックチェーンを活用した医薬品流通の実証実験を開始。(6/26)
  • 茨城県つくば市が昨年に引き続きブロックチェーンを活用したネット投票を行うと発表。(6/26)
  • SBI子会社マネータップに新たに国内7行が資本参加。(6/27)
  • Bitureがハッキング被害に遭い約450万ドル相当のXRP,ADAが流出したと報告。(6/27)
  • インド取引所Koinexが銀行サポートの欠如や規制を理由に取引所業務を停止すると発表。(6/27)
  • 東京工業大学がブロックチェーンのシミュレータ「SimBlock」を開発・配布開始。(6/27)

来週の相場予想

BTCは調整売りに警戒も底堅い推移を予想

世界的な金融緩和の流れや米国を取り巻く地政学リスクの高まりにより、フィアットマネーや伝統的金融資産の保有インセンティブが薄れ、暗号資産市場へ資金が向かいやすい状況となっている。そのような中、週末に控えたG20でどのような議論がされるかに注目が集まるが、大きな動きがなければ買いトレンドは継続すると予想する。一方、米中貿易交渉などに進展があれば、資金が回帰し下げ圧力になることも考えられる。

今の不安定な相場では、思惑的な売買により急落する場面も見られるだろう。今週も価格が急上昇する中、わずか1日の間でBTC=150万円からBTC=120万円まで30万円以上暴落した。しかし、それでも価格が大崩れしないと考えるのは、2017年末とは違い、メディアやSNSがそこまでの盛り上がりを見せていないからだ。今の相場を牽引しているのは、無知のままに参入してくるアマチュア投資家ではなく、金融市場での投資経験が深いプロ投資家である。この1年間で業界が築き上げてきた土台はそう簡単に崩れることはない。

直近上値としてBTC=125万円(11,600ドル)、直近下値としてBTC=108万円(10,000ドル)を意識。

来週のトピックス

  • Asia Blockchain Summit 2019が台湾で開催。(7/2-3)
  • XBlockchain Meet-upが東京で開催。(7/6)

コラム:正体不明の天才が生み出す価値

アートの世界で20年以上未だ正体不明のまま活動し続ける異色の天才アーティストがいる。彼は、世界中のストリートをキャンバスに見立て、これまで反資本主義や反グローバリズム、反人種差別などメッセージ性の強い社会風刺アートを数々残してきた。ストリートアートを語る際には「公共物を汚す違法行為だ」との批判を避けることはできないが、今や彼の作品を落書きと揶揄する人は誰もいないだろう。彼の作品は突如として現れる。つい最近も、彼の作品らしき「アンブレラ・ラット」の絵が東京のとある駅近くの防潮扉で見つかり話題を呼んだ。そう、彼の名はバンクシー。

アートの価値は需要と供給で決まる。それは世の中の市場原理と何ら変わりはない。しかし、需要が急増するきっかけはあまりに単純である。その作品がどのギャラリーで展示されたのか、また、その作品を誰が購入したのかによって価格は大きく変動する。つまり、アートは権威付けが何よりものを言う世界なのだ。それによって、アーティスト自身の展示会では数万円で売られた作品が、二次流通市場では数百倍、時には数千倍で取引されることも珍しくない。アートが金持ちの娯楽と言われるのはその所以からだろう。まるで金融商品のように富裕層の間でアートが高額売買され、アーティストには利益が還元されない構造問題を訴えてか、バンクシーがオークションで自身の作品が落札されると同時にシュレッダーで裁断される仕掛けを作ったというのは有名な話である。それにより価格が一層高騰したというのは皮肉な話だが。

バンクシーはストリートアート×社会風刺によって世界が認める価値を築き上げてきたが、それを担保しているのは、やはり彼が活動開始当初から正体不明を貫き、今もその立場を維持していることである。おそらく、彼の正体が明らかになった時には、世間からの注目が中長期的に薄れ、「神出鬼没で謎に包まれた天才グラフィティアーティスト」というバンクシ―のブランド価値は大きく毀損するだろう。バンクシーは作品の意図をほのめかすことはあっても、自ら具体的な発信をすることはない。正体のみならず作品が伝えたいことすらも見る側の憶測の域を超えないのである。そんな彼の偶像を多くの人が崇拝し、そこに確かな価値が生まれている。

忘れてはならない正体不明の天才がもう一人いた。ビットコインの生みの親、サトシ・ナカモトである。ジェネシスブロックの誕生から早10年。その名前から日本人ではないかとの声や、自ら私がサトシ・ナカモトだと名乗る声もあったが、未だその正体は明かされぬままだ。創始者の素性がわからず、分散的に管理・開発されているビットコイン。世界中の人がそのミステリアスな“何か”に今も踊らされている訳だが、それが周知のものとなった時、おそらくビットコインの価値は同様に下落の一途を辿るだろう。決済手段・価値の保存・分散性など様々語られるが、その価値の根源は創始者が秘める謎にこそ存在する。

 

編集校正:マネックス仮想通貨研究所