みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。

株式市場はようやく年初来高値を更新し、にわかに力強さを増してきました。米国で金融引き締め観測が急速に後退したうえ、中国でも在庫調整の進展が報告されるようになってきたこと、さらには英国の「無秩序な」EU離脱がまず回避されたことなどを好感したものと受け止めます。

国内においても、足元の景気はそれほど強いようには思えませんが、新天皇即位を前に期待感も高まってきているように感じます。いうなれば、もう1回正月がくるようなイメージでしょうか。これも消費には追い風になるのかもしれません。

筆者にとっても、ここまで株式市場が戻ってきたのはややサプライズでした。種々の不安要因はまだ残っているために楽観は禁物ですが、ひょっとすると潮目が少し変わってきた可能性があると思っています。

24時間営業論争と人手確保の難しさ

さて今回は、テーマとして「コンビニ」を採り上げたいと思います。先日、24時間営業を巡って、フランチャイズとコンビニ本社との間で議論が巻き起こっていることが各種報道によって明らかとなりました。本社側は契約通り24時間営業の堅持を要求したのに対し、フランチャイズである店舗側は人手確保が非常に難しい現実を背景に抵抗を示したのです。

報道で店舗側の状況を知る限り、フランチャイズオーナーは契約堅持への努力をかなりしたものの、その分自身が極限的な働きをせざるを得なくなり、その継続がもはや不可能になってしまったものと筆者は受け止めました。

働き方改革が推進される中、それに逆行するかのような仕事内容はフランチャイズオーナーにとってもかなりの負担であったのではと想像します。とはいえ、法治国家である我が国では、契約には履行義務が課されることに疑いの余地はありません。双方ともに自身の主張に合理性があると言える論争であったと考えます。

結果的に、コンビニ本社は営業時短実験の開始を明らかにし、これまでのビジネスモデルからの転換の可能性を示すこととなりました。

出店ペースの減速でコンビニ業界初の純減となるか

そもそもコンビニエンスストアは、その利便性(営業時間、立地、品揃え)から急速に日本で普及し、現在は国内でおよそ5.6万店が存在しています。1985年には約7,400店であったことと比較すると、過去34年で実に7倍以上に成長したことになります。

公共料金や税金の納付サービス開始、タスポ(たばこ認証カード)導入の影響などが出店を加速させ、2010年代前半には年間の店舗純増数は実に2,000店前後にも達していました。しかし、2015年以降は人員確保が困難になったうえ、コンビニの乱立も目立つようになり、出店ペースは減速が鮮明となっています。

会社計画を見る限り、2019年の純増数はごくわずかとなる見通しで、早晩純減に転じる可能性が増してきたといえるかもしれません。1985年以降、コンビニ店舗数が減少したのは1987年と2004年の2回しかありませんが、これらはいずれも大規模なリストラによるもので、その翌年には出店増に転じています。

趨勢的な純減となると、コンビニ業界ではおそらく初めてとなり、歴史的な転換点になります。今回の24時間営業論争はその背景にある構造疲労を改めて浮き彫りにしたのかもしれません。

構造疲労を解決し社会インフラとしての機能性を向上できるか

しかし、筆者はコンビニが今後漸減していくとは思いません。これだけ全国にあまねく存在しているコンビニは、郵便局と並んで社会インフラとしての重要性が今や相当に高く、コンビニがライフラインを支えているといっても過言でない状況となりつつあります。

確かに店数ベースでは転換期を迎えた可能性は否めませんが、住民票など公的証明書の発行なども含め、そのインフラとしての役割は今後さらに増していくのではないでしょうか。

一方、今回クローズアップされた人手不足問題は、セルフレジの導入や無人コンビニの実験などで対応は確実に進展しています。現在の人間による対面対応のメリットを活かしつつ、人手不足問題を解消緩和できれば、社会インフラとしての機能性がさらに向上するはずです。

さらに、消費者サイドでも24時間営業への強い要望はかつてほどではなくなっており、何が何でも24時間を堅持する必要はなくなってきたようにも思えます。

コンビニは今回のことを奇禍として、今後は消費者の新しいニーズやライフスタイルに改めて適合できる業態やビジネスモデルの模索を急ぐことでしょう。そして、その適応ができれば、これだけの拠点を既に抱えている以上、ビジネス規模としても相当なものが期待できると考えます。

もちろん、株式市場は現状の構造問題や成長ピッチの減速といった材料をどこかで懸念する可能性は否めません。しかし、その後の復活を前提とすれば、そういった調整局面は絶好の投資タイミングになるとも言えます。良くも悪くも、コンビニは現代日本の構造問題の縮図です。であればなおさら、問題解決への変化はどこかで顕在化してくると期待したいところです。