身の毛がよだつ程興奮する電気自動車のレース

先日、電気自動車業界のF1と言われる「フォーミュラE  香港レース」(以下、FE)を観戦に行った。毎年11月に開催されるマカオグランプリなど、嬉々としてカーレース観戦にいく筆者だが、正直電気自動車のレースにはあまり期待していなかった。

招待をしてくださった方には失礼だが、無機質なる電気自動車レースでは、あのガソリンとタイヤの焼け焦げる匂いとエキゾーストノートに痺れるガソリン車レースとは比較するまでもないと思っていたのだ。しかし、実際にFEのサーキットコースに立って観戦すると、身の毛のよだつ興奮を覚えるほどのレースであったことを皆さんにご報告したい。

レースそのものは市内中心部の道路を閉鎖して行われ、いつも訪問している香港金融当局(HKMA)が入居しているIFCビルの目の前を、レースカーが180キロ以上のスピードで走り抜けていくのである。レースカーの加速は、まるでスターウォーズの戦闘機のように瞬間移動しているのではないかと思われる速さだ。ガソリン車とは全く異なるトルクカーブで加速していくからである。

加速スピード、残電力量をにらむ駆け引きが見どころ

電気自動車の場合は一気にモーターが大きな力を発揮するので、スタートダッシュはガソリン車に比べてかなり速い。

また、ガソリン車ならガソリンが無くなればガソリンを注入することですぐに走り出せるのであるが、電気自動車は電池残量がなくなると充電に時間がかかり、実質ゲームセットとなる。これがガソリン燃料で走るレースカーと電力で走るレースカーの最大の違いだ。

従って電気自動車のレースは、電光掲示版にレース中の順位表が出るのだが、その横には残りの電力量も併せて掲示される。

トップを走り続ける車は、風の抵抗を受けて、電気の減る速度が後続の車より早くなる。そこで、いわゆるスリップストリームという技術で二番手の車が一番手の車の後にぴったりと追走し、燃費(残電力量)で優位に立ち、最後の土壇場で一番手の車を抜き去るという、定番の展開が予想された。

今回のレースでも想像した通りの展開になり、1位を維持していた車が最後は2位の車に抜き去られ優勝したかに思えた。しかし、優勝をもぎ取ったかに思えた車は、何度かそれまで1位で走っていた車に意図的に後ろから追突したという事で減点を食らい、結局は優勝カップから見放されるというおまけもついた。狭い市内の道路をレースコースに仕立てたためコースも狭く、曲がり角もかなりきついがゆえに接触事故も絶えないのが公道レースの厳しいところである。

香港は世界一の電気自動車シティとなるか

レースコースを後にする頃には、筆者もすっかりとFEファンとなり、後10年もすれば、F1はクラシックカーになり、世界のメジャーはFEになるのでは感じたほどである。

エントリーしているレースカーには、F1では見かけないMahindraのようなインドメーカーも名前を連ねており、FEは、カーレースのゲームチェンジャーになる可能性を秘めていると感じた。

電気自動車の普及率について様々意見があるようだが、テスラ創業者のイーロンマスク氏は「香港は世界一のEV(電気自動車)シティになる」と予言しているらしい。確かに街のここかしこにテスラを見かける。FEは、ゲームチェンジャー=香港を象徴しているのかもしれない。香港行政長官のケリーラム氏が高らかにレースの開催を宣言したのもむべなるかなである。

ちなみに、5月24日(金)に香港で行われる当社主催の投資フォーラムでは、京都大学VBL発のベンチャー企業で電気自動車会社を興したGLM代表取締役社長の小間氏にご登壇いただき、電気自動車のNow and Thenを語っていただく予定だ。興味のある方はぜひご参加いただければと思う。