空爆は1971年の第3次印パ戦争以来

2月26日、インド空軍の戦闘機が、パキスタン領域内を空爆したことをインド政府が発表しました。

インドとパキスタンは、両国の独立以来、カシミール地方の領有権を巡って、争ってきています。カシミール地方は、1947年にインドとパキスタンが英国から分離独立する際に、その帰属が決まらず、独立から2ヶ月後に暴動が発生したことを機に第1次インドパキスタン(印パ)戦争に発展しました。

1949年には、国連が調停に乗り出して両国が停戦に合意。現在も停戦ラインとなっている南北を分断する暫定ラインが引かれました。その後も1965年と1971年に、両国が争って第2次・第3次印パ戦争として戦場となった場所です。

カシミール地方は、イスラム教徒が住民の多数を占める地域で、インドとパキスタンが停戦ラインを挟んで南北をそれぞれ分断して実効支配しています。

インドがパキスタンにこの停戦ラインを越えて空爆を行ったのは、1971年の第3次印パ戦争以来のことです。翌27日には、インドとパキスタン双方が、互いの戦闘機を撃墜したと発表しました。両国軍の間で、他にもいくつかの戦闘が発生し、停戦ラインを越えた砲撃も続いているとのことです。

2月26日の攻撃ではパキスタン市民4人が死亡したほか10人が負傷した模様です。インドのスワラジ外相は、インド政府が「これ以上の状況の悪化を望んでおらず、自制心をもって責任ある行動をとる」と述べました。

パキスタン軍の報道官も「戦争の道を進みたくない」とコメントしました。両国の紛争がエスカレートすることが懸念される中、アメリカ、欧州連合(EU)、中国は、インドとパキスタン両国に自制した行動を求めています。

インドは、パキスタンの過激派が、カシミール地方で2月14日にインドの警察隊を狙ってテロを起こしたことへの報復として、今回の空爆を実施したと発表しました。このテロでは、少なくとも40人が死亡したと報道されています。

総選挙前にモディ首相が強気の軍事行動

インドでは、4月に総選挙が予定されています。政権奪取以来、高い支持率を誇ったモディ政権ですが、最近は地方選挙で劣勢が伝えられており、総選挙は政権の命運を賭ける戦いになります。

モディ首相は就任後、外資導入の積極化やインフラ整備の推進といった投資促進に加え、2016年11月には高額紙幣を廃止しました。2017年7月には物品サービス税(GST)導入といった経済構造改革も断行しながら、高い成長率を達成して、インド経済に繁栄をもたらしました。

構造改革により、一時的に経済が混乱する局面はあったものの、2018年後半からはインド経済は、一段の持ち直しの動きが見られます。2018年実質GDP成長率は、+7.3%に達した模様です。今年は、昨年のような原油高によるインフレ懸念や通貨安圧力も薄れ、株式市場にも良い環境ではないかと言われているだけに、政治的な安定は望ましいシナリオです。

選挙を前に、対外的に強気の軍事行動を取ることにより人気回復の意図があるとして、野党はモディ政権を攻撃しています。両国とも核保有国ですので、軍事行動がエスカレートしないことを祈るばかりです。インドの総選挙への影響を含めて、軍事行動の行方には注目しておくべきでしょう。