グレーターベイエリア構想のインパクト
香港政府観光局 が1月31日に発表した2018年通年の香港への旅行者数は、前年比11.4%増の6,514万7555人だった。2年連続の増加で、2014年に記録した約6,084万人を超えて過去の最多旅行者数を更新した。
背景には、全体の8割近く(78.3%)を占める中国本土客が順調に増加したことが大きな要因である。香港‐本土を結ぶ高速鉄道「広深港高鉄」が9月に開通したことや、香港とマカオを繋ぐ海上橋「港珠澳大橋」が10月に開通したことで、本土からの日帰り客が増え、全体数を押し上げた。
中国本土からの旅行者数は14.8%増の5,103万8230人となり、前年が3.9%増だったことに比較すると伸び幅が大きかった。通年で5,000万人を超えるのは初めてのことである。本土からの宿泊旅行者は7.4%増の1,990万1957人だが、日帰り旅行者は20.1%増の3,113万6273人と伸び率は大きかった。
広東・香港・マカオ大湾区(グレーターベイエリア)構想の推進により、開発や規制緩和が進むことが予想され、香港への旅行者・入境者はより増加するだろう。少なくとも、高速鉄道や海上橋の開通効果が2018年は2~3か月しかなかったわけだから、年間を通じた効果が表れる2019年は旅行者・入境者が大幅に増加すると思われる。
国際通貨基金(IMF)の世界経済予測2019年1月によると、中国の経済成長率は2018年の6.6%から6.2%へ減少する見込みだ。2016年でも中国本土からの客数の減少は5%程度にとどまっており、グレーターベイエリア内での繋がりが深まるインパクトの方が大きいと見込まれる。ちなみに、実感としては、最近、九龍半島側の(西九龍駅・写真)や尖沙咀(チムチャツイ)周辺の混雑ぶりは、2016年以上の感がある。
東京より多い香港への外国人旅行者数
中国本土を除く海外からの旅行者数も、増加傾向を維持している。香港を訪れた中国本土を除く海外からの旅行者数は、2017年の約1,402万人から、2018年は約1,410万人に増加した。特に、欧米などの遠距離客が2.8%増加したことも2018年の特徴だろう。香港‐欧米主要都市間の航空座席量の増加と米国経済の堅調な推移が要因である。
ただ、台湾(4.3%減)や韓国(4.5%減)、インドネシア(11.4%減)をはじめアジアからの訪問客は不振だった。その理由は、周辺地域との競争激化もあるだろうが、現地の所得・物価水準から考えると、香港での宿泊費と飲食費といった滞在費の高さは悩ましいところ。
それでも、香港への海外からの旅行者数の突出ぶりは、この街に引き付けられる人の多さを表している。よく引き合いに出される東京都と比べてみるとそれがわかる。
香港は、面積では東京都の約半分の1,106平方キロメートルに過ぎない土地に、約734万人(2016年)の人口がある街である(外務省ホームページより)。東京都の人口約1,375万人の約半分だ。しかし、2017年に東京都を訪れた外国人旅行者は約1,377万人(東京都産業労働力より)と、旅行者数では、東京よりも香港に軍配が上がるのである。
ちなみに、日本からの旅行者数は、国・地域別で5位の128.8万人と前年比4.7%増で堅調だった。2月でも気温が20度前後と温暖で美食の街「アガる」香港を皆さんも体験してはいかがだろうか?
※本稿記載の旅行者数はいずれも延べ人数