みなさん、こんにちは。『今どき株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。新年あけましておめでとうございます。本年も引続き、株式相場のテーマについて分析を行ってまいります。ご愛読いただけますよう、よろしくお願いいたします。

さて、年明けの株式市場は大崩れして年末からは一旦落ち着きを取り戻した様子です。しかし、盤石と思われた企業業績には曲がり角の気配が漂ってきており、米中貿易摩擦、消費税の再引上げなど懸念材料も目白押しとなっています。ここで一気に強気に転換するにはまだ材料が足りないという印象は拭えません。筆者はまだしばらくは慎重なスタンスを維持したいと思っています。

仮想通貨の技術として注目されたブロックチェーン

さて、今回はブロックチェーン(分散型台帳技術)をテーマに取り上げてみましょう。今更ブロックチェーン?と思われるかもしれません。しかし、このコラムの主目的である「テーマの再訪」という視点からすれば、むしろ今こそこのテーマを取り上げるべきと考えました。

まずはブロックチェーンについておさらいしておきましょう。ブロックチェーンという言葉が株式市場で注目されたのは2017年でした。

当時は仮想通貨(暗号資産)投資がヒートアップし、その凄さのカギとなる技術としてブロックチェーンが取り上げられました。この技術を用いると一度記録されたデータは遡及変更がまず不可能なため、政府の保証がない仮想通貨でもその信頼性が担保されるとの見方が一気に浸透したのです。

その結果、仮想通貨相場は大暴騰したのですが、その後、投機性の高さや仮想通貨取引所の経営問題などから程なくして急落し、現在も停滞を余儀なくされています。それに伴い、ブロックチェーンという技術もやがて口の端に上らなくなりました。

しかし、ブロックチェーンそのものの技術が揺らいだわけではありません。むしろ、仮想通貨という「投機的な用途」への過剰な期待感が剥落したことで、その革新性や将来性に対して冷静な判断ができる状況にようやくなったのだとも言えるでしょう。

食品の安全担保にもブロックチェーンの強みを活かせる

今後はブロックチェーン技術の活用が実生活にもたらすメリットにより注目が集まってくるのではないか、と筆者は予想します。インターネットはその黎明期、凄い技術との期待と現実の活用法に大きなギャップが存在していましたが、気がつけば今や日常生活に欠かせないものとなり、クラウドやIoTといった新領域をも創造するインフラにまで成長しました。

黎明期にインターネットがこういった新領域を創造発展させることを具体的に想像できた人はほんのわずかだったはずです。ブロックチェーンもおそらくはそういった発展が予想される重要な技術であると言えるでしょう。仮想通貨とはこれまでのところあだ花となってしまっていますが、ブロックチェーン技術が本当に活用されるのはこれからだと考えます。

では、いったいブロックチェーンはどういった分野への展開が期待されるでしょうか。もちろん実際には予想を大きく越えた用途が開発されると想像しますが、ブロックチェーンの強みである所在の信頼性や移動のトレーサビリティ(追跡可能性)がフルに活かされる分野となることは間違いないでしょう。

既に食品(加工)の流通経路や生産情報にブロックチェーンを活かし、産地などの表記偽装を排除して食の安全を担保しようという試みも出てきています。再生可能エネルギーにおいても、利用者がその発生プロセスをきちんと把握できるようブロックチェーンを活用する動きがあります。これらなどは将来性を感じさせる展開と言えるでしょう。

同様に、真贋をベテランの目利きに頼るという鑑定といった分野にも応用が効くのではないかと考えます。これまでは一部の権威や業者自身が担保していた信用をブロックチェーンに置き換えて、さらに透明性を引き上げるというのは実利にも沿った展開になるのではと想像します。

公的手続におけるブロックチェーンの活用も

さらに筆者が期待するのは、登記簿や証明書などの公的機関や金融機関における活用です。もちろん、プライバシーの保持といったクリアすべき課題は多々ありますが、これが実現すれば地面師による詐欺や預金証書の書き換えといった事件にはかなりの抑制効果があるのではないか、と考えます。

現在は証明書の発行に時間とコストがかかるうえ、紙ベースであれば偽造も難しくありません。これらをブロックチェーンで管理できれば、公的機関や金融機関での生産性向上に寄与するうえ、民間においてもより迅速かつ低コストで証明を取得できるようになるはずです。

公的手続きにおけるインターネットの利用はようやく緒に就いた段階ですが、一旦IT技術の導入が浸透すればブロックチェーンの活用にも弾みがつく可能性は十分高いと考えます。インターネットがITバブル期の想像もされなかった世界を実現したように、ブロックチェーン技術もそういった新しい世界を切り拓き、株式市場でも息の長いテーマに成長していくのではないか、と予想しています。