8月5日から、湖北、江西、山東などの地域で、数名の女性の赤ちゃんは女性ホルモンの数値が大人並の水準になったとされ、胸が膨らみ始めるなどの早熟現象が出たと報道されています。そして、この数名の乳幼児の共通点は、中国の乳児用粉ミルク製造会社である聖元国際の粉ミルク製品を飲んでいたと報じられています。中国衛生部はすでに9人の専門家から成る調査委員会を設け、聖元国際の乳児用粉ミルクの検査を行っており、乳児患者の症例分析も始めています。衛生部は早いうちに調査の結果を発表する予定です。ただ、専門家によると、乳製品会社が粉ミルクに女性ホルモンを添加しても、味が良くなるといったような商業的なプラスがないため、乳製品会社による添加ではなく、女性ホルモンが原料乳に含まれていた可能性が高いと予測。原料乳に含有されるとしたら、乳牛の飼育段階で、生産性を高めるため人為的にホルモンを摂取させられた可能性があると推測しています。
中国の乳業といえば、メラミン混入事件が記憶に新しいところですが、この事件で重要なのは、聖元国際は2008年のメラミン混入事件のあと、聖元ブランドの粉ミルクの原料乳調達地を国内から海外に転じていることです。問題となりそうな粉ミルクの原料乳調達地はニュージーランドのようです。8月7日、聖元国際は製品にホルモンを添加しておらず、安全性には自信を持っていると発表。そして、不正な指摘について法的手段で個別のメディアの責任を追及する姿勢を発表しました。聖元国際は粉ミルク製造で中国2位の企業で、中国の乳児用粉ミルク市場で10.7%のシェアを占めています。2005年に米国ナスダックにADR上場しました。2010年来、中国乳製品業界の回復成長とともに、聖元国際の株価は約3割も上昇。しかし、今回の事件が報道された後の株価は大きく下落しています。
2008年の中国乳製品業界のメラミン混入事件の前は、中国の国産粉ミルクの市場シェアは45%であり、外資粉ミルクが55%でした。事件発生後の2ヶ月のうちに、国産粉ミルクの市場シェアは30%以下に下落し、いまだに事件前の水準を回復していません。今回の「聖元事件」の真相はまだわかりませんが、中国乳製品業界は再び大きな打撃を受けることになりそうです。ただ、乳業メーカーならなんでも売られている状況ですので、逆に言えば、粉ミルクがメインでない乳業メーカーについては投資を検討することも出来るかもしれません。