米ドル/円の上値と下値の目安は?

ここで、1つに米ドル/円の月足チャートを眺めてみていただきたいと思うのです。そこに、31ヶ月移動平均線(31ヶ月線)と62ヶ月移動平均線(62ヶ月線)、一目均衡表(月足)などを描画してみると、実に様々なことがわかってくるということをあらためておさらいしておきたいと考えます。

まず、米ドル/円の昨年11月の月足ロウソクは、終値で一目均衡表の月足「雲」上限を上回ることとなり、それは9月、10月に続いて3ヶ月連続のこととなりました。

また、米ドル/円の月足ロウソクと相性がいい62ヶ月線に対しては、6月以降11月まで6ヶ月連続して終値で同線を上回る形での推移となっています。さらに31ヶ月線についても6ヶ月連続して終値でそれを上回る格好となったうえに、足下で62ヶ月線と同様に31ヶ月線も方向が上向きになってきていることがわかります。

少し振り返りますと、米ドル/円は2017年1月に31ヶ月線を終値で下抜け、以降は2018年5月までずっと31ヶ月線に上値を押さえられ続けました。つまり、トランプ氏が合衆国大統領に就任して以来17ヶ月間も長らく米ドル/円は低迷を続け、ここにきてようやく上方視界が開けてきたということになるわけです。そうした複数の点を考え併せますと基本強気の流れに依然変化はないものと思われます。

また、あらためて確認しておきたいことに米ドル/円は2015年6月に125.85円の高値をつけて以来、3年ほどの長きに渡って形成していた三角保ち合い(トライアングル)を2018年9月以降にクリアに上放れたと見ることができるでしょう。その意味において当面の上値余地は十分に見込めるものと思われます。

当面の下値は、1つに以前形成していたトライアングルの上辺や前述した62ヶ月線、月足「雲」上限などが目安になると考えられ、仮に何か突発的な出来事が悪材料視された場合に、一時的にも108円処の節目が試される可能性もないではないものと見ておきたいと考えます。

逆に、当面の米ドル/円の上値の目安ということでは、まずもって115円の大きな節目と2016年12月高値、2017年1月高値がともに位置する118円台後半の水準というのが、まず先に意識されやすいところになるものと見ます。

仮に、この118円台後半の水準を上抜けてくると、そこから一気に目線が上がりやすくなると考えることもできそうで、冒頭に触れた米国株高が2019年に実現すれば、それに伴って米ドルとの強みが120円あるいは125円程度まで再評価されてもおかしくないと個人的には考えます。

ちなみに、2018年の米ドル/円の年間を通じた最大値幅は過去20年の最小レベルとなりました。それは、端的に言えばポンド安&ユーロ安の一報で米ドル高&円高の傾向が強まり、結果として米ドル/円は動きたくても動くに動けなかった、という事情が関わっているものと思われます。

引き続き、2019年もポンド安&ユーロ安の流れは基本的に変わらないものと思われ、その一方で米ドルが相対的に強含みとなる部分も変わらないものと見ますが、2019年は「米大統領選の前年」であるということに加え、テクニカルに上値が試されやすい状態になってきたことを考え併せますと絶対的にも米ドル高で、なおかつ米ドル/円の上値余地も大きく拡がりやすくなるものと見ます。

ユーロ/円の上値と下値の目安は?

次にユーロ/円の話題に触れたいと思いますが、その前にユーロ/米ドルの状況から少しおさらいしておきたいと思います。さかのぼりますと、ユーロ/米ドルは2018年11月に一時1.1214米ドルまで下押したところで一旦下げ渋って反発する展開となりました。これは、2017年1月安値(=1.0340米ドル)から2018年2月高値(=1.2555米ドル)までの上げに対する61.8%押しというのが1.1200米ドル処にあたり、その節目を一旦は試したということになるものと理解すればいいでしょう。

つまり、一旦は「テクニカルに底入れ&反発した」ということになるわけであって、依然ユーロやポンドを取り巻く状況が大きく好転したわけではないということも認識しておきたいところであると考えます。

実際、2018年11月に1.12米ドル処で下げ渋って一旦反発したユーロ/米ドルは、その後に1.145米ドル処を幾度も試した挙句、その度に跳ね返される展開となりました。この1.1450米ドル処というのは、2018年9月高値から同年11月安値までの下げに対する38.2戻しの水準にあたるところであり、また2018年9月下旬以降に3段下げを演じたなかでの1つの節目として意識された水準でもあります。

つまり、またしてもユーロ/米ドルは「テクニカルに上げ渋ることとなった」わけです。その意味からして、次に下値の目安として認識しておかねばならないのは、まず1.1000米ドルの心理的節目ということになるでしょう。仮に同水準をもすんなり下抜けた場合は、次に2017年1月安値から2018年2月高値までの上げに対する76.4%押しの水準=1.0862米ドルあたりが意識されるということになるものと思われます。

なにしろ、ユーロはブレグジット問題をはじめイタリアの修正予算案に関わる財政問題や、フランスで発生したデモとそれに絡むマクロン政権の求心力凋落、ドイツのメルケル首相の指導力低下や景気鈍化などなど、数多くの難題を抱え込んだままであり、やはり当面は本格反発に期待することが難しいと考えざるを得ません。

よって、やはり対米ドルでのユーロの行方については基本弱気と見ています。その一方で、前述したように米ドル/円は基本強気ということになると、肝心のユーロ円については弱気と強気の綱引き状態ということになり、あえてどちらかと言えばユーロ安に引きずられやすい状況ということになると見ます。

当面の上値については、2018年9月とその前の同年4月に押し戻されている133円処が限界ということになると見られ、むしろ2016年6月に109.41円の安値を付けて以来、長らく下値を支えてきたサポートラインを下抜けやしないか大いに気になるところです。下抜けた場合には、やはり市場の失望がどうしても大きくなりがちで、まずは節目の124円処を試した後、もし同水準を下抜ければ115円処までは目線が下がる可能性もあると見ます。

ポンド/円の上値と下値の目安は?

2019年が3月にブレグジットの期限が訪れることで、場合によってはポンドを中心に外国為替相場が大荒れとなる可能性もあると見ておく必要がありそうです。

執筆時においては、2018年12月半ば頃に英国の与党・保守党がメイ党首(首相)の不信任投票を実施し、結果的に「信認」が決まったことから、一旦はポンドが強く買い直される場面というのも垣間見られてはいます。とはいえ、これで英国議会がすんなり離脱協定案を受け入れるはずもなく、なおも「合意なき離脱」に突き進む可能性は濃厚と言わざるを得ません。もちろん、その場合の市場の動揺は「想像もつかない」というより他にないでしょう。

よって、ポンド/米ドルで言えば、まず2018年12月に明確に下抜けてしまった1.2700米ドル処が今後は上値抵抗として意識されやすくなると見られ、そこはテクニカルに戻り売りが出てくることを覚悟しておきたいと考えます。そのうえで、戻り売りを仕掛けることを前提とする場合、対米ドルでのポンドの下値は、やはり少なくとも1.2000米ドル割れまで見込んでおく必要があると言えるでしょう。その先、2017年1月安値の1.1987米ドルをも下抜けるような展開となれば、そこからは目安を見出すこともなかなか容易ではなくなってきます。

あのブレグジットの衝撃というものを思い返したとき、2019年のポンドとの向き合い方というのは、過去に例を見ないぐらいの慎重さが求められるということになるのでしょう。政治の舞台でのことですから、思わぬ落とし処が見出され、逆にポンドが急反発する可能性だってあるわけです。その意味でも、やはりポンドに関してはより厳しいポジション管理が求められるということになるでしょう。

そこで肝心のポンド/円ですが、やはりポンドの行方については基本弱気と見ています。その一方で、前述したように米ドル/円は基本強気ということになると、ユーロ/円と同様、ポンド/円については弱気と強気の綱引き状態ということになり、あえてどちらかと言えばポンド安に引きずられやすい状況ということになると見ます。

正直言いまして、仮に「合意なき離脱」ということになったとしても、現段階ではブレグジット・ショック後の安値=124.83円より円高方向の水準というのが想定しにくく、さしあたっての下値の目安は125円ということにしておきたいと考えます。

一方、ポンド急反発となった場合でも、その時点の発射台が低ければ、そこからの上値も自ずと限られると考えざるを得ず、現時点では節目の155円処あるいは2018年1月高値=156.61円あたりまでを目安とするよりないように思います。

 

前編「米大統領選の前年の2019年は米国株高になる可能性」はこちら。
中編「米国バブルはこれから、過度に先行き悲観しないこと」はこちら。