英議会の承認は不透明なまま

香港は1842年から1997年まで英国領だったことはご存知の通りであるが、EU離脱交渉で1つのトピックとなっている場所に、英国領ジブラルタルがある。ジブラルタルはイベリア半島の南端に位置しスペインに隣接しているものの、1713年以来英国領であり、スペインにとっては何度も奪還を試みては果たせなかった場所でもある。

欧州連合(EU)は11月25日に臨時EU首脳会議を開催し、英国のEU離脱条件で正式に合意したが、交渉の俎上にジブラルタル問題も含まれていたのは、こうした背景がある。今回は、スペインが折れた形で離脱合意案が成立、合意文書に調印するところまでこぎつけたが、スペインの落胆はいかほどだろう。

さて、合意案の審議は、英国議会に移り、メイ英内閣は12月中に採決を目指す考えだが、離脱案に対しては、与党保守党内部でも反対する声があり、強い抵抗が予想される。EUは、声明で今回の合意案に代替案はないとして、英国議会に対して早くも警告するという異例の合意である。

合意案は、英国とEU間が自由貿易圏を創設し、規制・関税面で密接に協力するという内容だ。離脱交渉で最も難航したアイルランド国境問題に関しては、EUと英国双方が永続的な解決策に取り組むとの宣言にとどまったものだが、合意なき英国のEU離脱よりはマシといえる。

英議会が今回の合意案を否決した場合、英国は来年3月29日に合意がないままEUを離脱することとなり、何の移行期間も設定されず、EUにも英国にも混乱が予想される。

ハモンド英財務相は、「無秩序な状態が続いて起き、EU離脱自体がなくなるかもしれないという可能性」にも触れ「EUからの円滑な離脱を秩序立って実行することは、英国経済にとって数百億ポンド相当の価値」があるとコメントしている。12月中も、ポンド、ユーロとも英国議会の成り行きに左右される展開が続きそうである。

なお、欧州関連では、イタリアの財政問題を巡ってのEU内の不協和音も気がかりである他、先週はドイツ銀行の株価が、欧州最大級の資金洗浄疑惑への関与の疑いから下げがきつくなっており、引き続き要注意であろう。

今週はG20米中首脳会議、パウエルFRB議長の講演に注目

今週11月30日~12月1日には、アルゼンチンで開かれる20ヶ国・地域(G20)サミットに出席するトランプ米大統領と習近平中国国家主席が、首脳会議を行う予定である。

中国は、今月に入って通商問題に関する協議項目のリストを米国に送付したり、米中両国が事前に協議を続けていたりしており、双方の歩み寄りや対立緩和への期待が高まっている。貿易摩擦の問題は、短期的に雲散霧消するようなものではなく、より長期的な問題だろう。しかし、歩み寄りは市場に好感される可能性が高いと思われる。

他には、11月28日に予定されているパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の講演にも注目が集まろう。直近では、クラリダ副議長が、海外の経済成長鈍化にも注意を払う必要があると発言するなど、ハト派的な金融政策スタンスへの期待が高まっている。

ただ、足元の経済状況や特に賃金の上昇圧力や関税の影響を考慮すると、市場が織り込んでいる12月のFOMC(連邦公開市場委員会)での0.25ポイントの利上げは、実施されるだろう。

問題は、来年以降の利上げに対するFRBのスタンスで、9月の利上げ実施後のような強気の見方ではなく、慎重で柔軟な姿勢を打ち出せば、金利上昇による米国経済の成長鈍化に対する懸念が縮小するかもしれない。今週もこうしたイベントに目が離せない週となりそうである。