米ドル/円はテクニカルに一旦調整したとの見方も
先週末11月16日の米ドル/円は、少々長めの陰線を描きながら一時112.64円まで下値を切り下げる展開となりました。
市場では「クラリダFRB(米連邦準備制度理事会)副議長が『世界経済減速の証拠がいくつかある』と述べたこと」や「ダラス連銀のカプラン総裁が来年から2020年にかけての成長鈍化見通しを示したこと」などが足下のドル安の主要因との声も聞かれます。それは多分に後付け講釈の色合いが濃いと言えるでしょう。
少し振り返れば、米ドル/円は先週11月12日に一時114.21円まで上値を伸ばした後、反落して以降は週末まで基本的に弱含みの展開を続けました。これはユーロ/米ドルとは真逆の値動きであり、実際、ユーロ/米ドルは11月12日に1.1214ドルまで下押した後、反発して以降は週末にかけて一時1.1420ドル台に乗せるリバウンドの動きを見せることとなったのです。
ユーロ/米ドルの直近安値=1.1214ドルというのは、2017年1月安値から今年2月高値までの上昇幅の61.8%押しの水準に近いことから、1つの節目に到達したことでテクニカルに一旦下げ渋ったという見方もできるでしょう。また、加えてNY原油先物価格が11月14日に13営業日ぶりの反発となり、とりあえず下げ渋る展開となったことも影響しているものと見られます。
同日は、事情に詳しい関係筋の話として「石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国のロシアなどが2019年に最大で日量140万バレル減産する提案を協議している」などといった話題も市場に飛び交っていました。
つまり、足下は1つの節目(下値の目安)に到達したユーロ/米ドルが一旦下げ渋ったところに原油先物価格の下げ一巡という状況に。それも相まって、ユーロが一定の戻りを試す動きとなった一方でドルが調整売りに押されるという展開。ある意味で、米ドル/円はテクニカルに一旦調整したという見方もできるものと思われます。
結局、先週末11月16日の米ドル/円は終値で一目均衡表の日足「雲」上限の水準に留まることとなりました。ここは10月26日安値から11月12日高値までの上げの半値押しの水準でもあることから、そろそろ一旦下げ止まる可能性が高いと見ます。
しばらくポンドやユーロを積極的に買い上げるのは難しい
逆に、目先一定のリバウンドを試す動きとなっているユーロ/米ドルには、今後もまだまだ難題が降りかかる可能性が高く、足下の戻りは自ずと限られるものと思われます。
まず、今週11月21日には、欧州委員会がイタリアの2019年予算案について最終判断を公表すると報じられています。既知のとおり、イタリア政府は先週11月13日に欧州連合(EU)が求めていた予算案の修正を拒み、EUとの対決路線を堅持する姿勢を明らかにしました。
かくなるうえは、EUの執行機関である欧州委員会が「過剰財政赤字是正手続き(EDP)」と呼ばれる制裁手続きの開始を勧告する可能性も浮上してくるわけで、その意味でも11月21日の公表内容は大いに注目されることとなりそうです。
また、先週11月14日に英国のメイ首相が、EU離脱に関する協定案の承認を閣議で半ば強引に取り付けたことも見逃せません。
これまでに与党内や閣内でも反対の声が上がる状況となっており、場合によっては首相の不信任投票の実施が近日中にも現実味を帯びる可能性もあるとされているわけです。かといって反対派の中から次期首相候補に名乗り出るものがでてくるわけでもなく、文字通り、泥沼化してしまっています。
最近の世論調査では「EU残留」が「EU離脱」を上回っている模様でもあり、今しばらくポンドやユーロを積極的に買い上げることが難しい状況は続くものと思われます。