中国人民銀は人民元を弾力的に運用する方針を表明しました。具体的には、2008年7月から1米ドル=6.83元程度で実質的にドルペッグとなっていた人民元を、徐々に切り上げていく方針であるということを意味します。この発表後、人民元は非常に緩やかにではありますが、切り上げ方向に向っており、1米ドル=6.792元程度まで切り上がってきました。もっとも、中国政府としては為替を切り上げることは輸出に不利に働きますから不利です。これに加えて、かつての日本の状況を見ているために急激な切り上げや、当たり前ですが、人民元の解放は行わないでしょう。
日本もかつては1米ドル=360円の固定相場でしたが、変動相場制に移行して、最終的には1米ドル=80円を切るまでの円高に向っていきました。その過程では、円高になる、しかも円が切り上がることによって、輸出は駄目だけど、それを放っておけない日本政府が内需拡大策をとることによって企業業績は思いのほか改善し、株価も上昇するといった感じで、外国人からすれば株と為替がダブルで上昇し格好の投資対象だったわけです。それならもっと投資しようと言うことで、日本に対する一層の資金流入が起こり、スパイラル的な株高へと進んでいったわけです。ここで日本に大量に流れてきた資金が株と不動産に流入して起こったのが1980年代後半のバブルです。もちろん、ご周知のとおりこのバブルは弾けてしまって日本経済に甚大な影響を与えたわけですが、この過程を見ている中国にとっては、容易に為替を解放しないし、上昇させないでしょう。日本にはそれを拒否するだけの力がなかったわけですが、今の中国にはそれを押し通せる力があります。
もっとも、そうはいっても、人民元はコントロールされながらも非常に緩やかに切り上げ方向に向うことにはなります。では、それを踏まえて何を買えばいいかと言うことですが。以前にも指摘したように航空、輸入業者、食品など原料を海外から輸入するメーカー、不動産、銀行などがメリットを受ける銘柄と考えられます。しかし、ここで言いたいことは、中国は従来のようなインフラと輸出ではなく、内需(消費文化)にこそ有望性があり、人民元高はその方向を確実なものとするのではないかということです。輸出が圧力を受ける一方で、国の成長を維持しないと13億人を食べさせていけない中国としては、所得倍増計画を実施して内需を拡大する方向にもっていくしかないからです。ですので、ここから数年は中国の内需関連銘柄に注目をしていくべきと考えます。中国内需関連銘柄には高い成長を遂げているにもかかわらず割安に放置されている銘柄がいくつもあります。