日経平均は2万3000円ブレイクに失敗も秋冬の株高を予想
日本株が冴えません。引き続き米国と中国を中心とした通商問題が不透明なことが株価が冴えない最大の理由だと考えますが、そこに西日本を中心とした大雨や北海道の地震などの天災が起き、マーケット全体のセンチメントがかなり悪化してしまったようです。日経平均は5月以降、4度目の2万3000円の節目超えにトライしましたが、残念ながら今回もブレイクとはなりませんでした(チャート参照)。筆者は企業のファンダメンタルズに重きを置いており、通常テクニカル指標は重要視していませんが、それでも人間の心理がマーケットに影響することは疑いの余地がなく、ここまで2万3000円に頭を抑えられるとさすがに嫌な感じがしますし、マーケット参加者の多くがそう思っているのではないかと感じます。
ただ、筆者は今後の日本株市場には比較的楽観視しています。もちろん貿易戦争や新興国の通貨安などリスク要因はあるものの、リスクがない相場などほとんどありません。いくつかの観点から秋冬以降日本株は上昇に向かうと考えています。そのように考えている理由をいくつかご説明してまいります。
日本企業の業績は好調
まずなんと言っても日本企業の業績が好調なことが挙げられます。QUICK社の集計によれば、東証1部上場の3月決算企業の第1四半期(4-6月)の営業利益は前年同期比10%強の増益となりました。純利益は同14%の増加で通期の会社予想に対してすでに27.3%進捗しています。今後中間決算や第3四半期決算時点で業績予想を上方修正する企業も増えてくるでしょう。
2点目に、業績好調にも関わらず日本株がバリュエーション面で割安なことが挙げられます。以下のチャートは2015年以降の日経平均と予想PERの推移です。現在の日経平均の予想PERはちょうど13倍程度(チャートの下から2番めの水色の線)ですが、今年の2月に世界的な株価急落が起きた際にPER12倍に接近したタイミングを除けば、予想PER13倍というのは非常に低い水準です。日本株は割安な水準にあると言って良いと考えます。
3点目は、秋以降は株高になるパターンが多いということです。以下のグラフは2012年から今年まで年初を100とした7年分の日経平均の値動きです。1年間を3ヶ月ごとに区切ってみると、10-12月の3ヶ月は株価が上昇する年が多かったことをご覧いただけると思います。
その理由として、秋口はマーケットへの影響が大きいイベントが多かったことが挙げられるでしょう。2014年は10月末に日銀が追加金融緩和を行いました。2016年は11月に米大統領選があり、トランプ大統領が勝利して景気刺激策への期待から株価は大きく上昇しました。そして昨年は安倍総理が衆院解散総選挙の実施を発表し、与党が勝利してアベノミクスが強化されるとの思惑が働きました。
今年はまもなく自民党総裁選が開催されます。余談は禁物かもしれませんが、報道によれば安倍総理の優勢が伝えられており、昨年の総選挙と同じような効果が期待できるかもしれません。また、11月に米国の中間選挙が行われます。米中貿易戦争は「中国や諸外国に物申せる大統領」というトランプ大統領の支持集めという側面が多分にあると考えます。選挙が終われば、米国と中国の間で一定の手打ち策が出てくるでしょう。これらの好材料が実現すれば、売り越しが続いている外国人投資家が買いに転じることが期待できそうです。なお、10-12月の3ヶ月間の合計を見ると、2012年から昨年まですべての年で海外投資家は日本株を買い越しています(グラフ参照)。
以上の理由から筆者は日本株が秋以降上昇していくと考えています。それでは最後に参考として特に秋冬に調子の良い銘柄をご紹介します。
秋冬に調子の良い銘柄は?
今回は「秋冬に調子の良い銘柄」東証1部・2部・マザーズ・JASDAQ上場銘柄のうち、過去10年間の株価データを取得できた2,180銘柄について、9月末と12月末の株価を比較した騰落回数を算出しました。すると以下の表の通り計7銘柄が10年間すべて上昇していました。
10年間とも上昇していたのは、寿スピリッツ(2222)、マックスバリュ東北(2655)、ヒラキ(3059)、タカショー(7590)、オーエムツーネットワーク(7614)、近鉄エクスプレス(9375)、サガミチェーン(9900)の7銘柄です(表参照)。最後に各企業の概要や業績動向についてマネックス銘柄スカウターから抜粋したものをご紹介します。
寿スピリッツ(2222)
寿製菓(米子本社)・ケイシイシイ(千歳)、シュクレイを中核とする菓子製造・販売の持株会社。全国各地のオリジナルブランド菓子とショップブランドの総合プロデュースを展開。「銘菓因幡の白うさぎ」「お菓子の壽城」「フランセ」「九十九島せんぺい」「ドゥーブルフロマージュ/ルタオ」など全国各地の文化や伝統を地域ブランド銘菓として企画・開発・販売。全国規模で地域性ある小売店を運営。新業態の店舗開発、インバウンド対策強化、海外における事業モデル構築に注力。2016年明治からフランセ(「ミルフィユ」等の洋菓子類の製造・販売)の株式を譲受。
マックスバリュ東北(2655)
イオングループのスーパーマーケット。秋田・山形・青森・岩手県でスーパー「マックスバリュ」、食品ディスカウント「ザ・ビッグ」、小型店舗「マックスバリュエクスプレス」を展開(95店舗、2018年2月)。午前7時の開店時刻、「4時からデリカ」などサービス拡充を推進。2014年岩手県のマックスバリュ北東北を吸収合併。2016年新潟県7店舗をイオンリテールへ分割譲渡、「ウエルマート」店舗を「マックスバリュ」に変換。
ヒラキ(3059)
靴メーカー。通信販売(カタログ・インターネット)を主軸に、ディスカウント店舗「靴のヒラキ」、卸販売の3流通チャネルを通じてファミリー層をターゲットに「安さ」にこだわった自社企画の靴・履物を販売。卸販売は大手小売店(チヨダ・西友等)へのOEM商品供給。海外での委託生産と海外メーカーとの直接取引により廉価な商品を提供。「180円スニーカー」「ワンコイン(500円)で気軽に買える靴」、衣料品や日用雑貨など自社企画開発の低価格商品と特価商品に特色。卸販売の主要取引先はチヨダ、トライアルカンパニー、西友。
タカショー(7590)
ガーデニングのトップメーカー、和歌山県海南市本社。環境エクステリア(インドア・アウトドア庭園・緑化)に関する製品の企画開発、 ガーデン用品の輸出入販売、エクステリア商品のソフトウェア開発販売。庭空間を構成する各種庭園資材の製造販売。プロユース向けはガーデンエクステリア分野(工務店・ハウスメーカー向け)、コントラクト分野(公共事業、商業施設等)、LEDソリューション提案。ホームユース向けはホームセンターへの卸売が中心。主力商品は竹木製フェンス・ガーデンファニチャー・緑化資材等の庭園資材、LED等の照明器具。海外はヨーロッパを中心に3000店舗の小売店に販売。「5thROOM」に基づいた快適な暮らし方提案の「スマートリビングガーデン」に注力。
オーエムツーネットワーク(7614)
食肉小売事業を中心とする持株会社、エスフーズの子会社。精肉小売(単独店舗・百貨店内店舗・スーパーマーケット内店舗で精肉・肉加工品を販売)が主力。その他、肉加工品製造(ハム・ソーセージ等)、惣菜小売、外食(焼肉・しゃぶしゃぶ店、ステーキハウス)などを展開。店舗は食肉小売店128店、惣菜小売店24店、外食53店(2018年1月)。2013年「アウトバックステーキハウス」の日本におけるレストラン事業を譲受。
近鉄エクスプレス(9375)
近鉄グループの国際総合物流会社。海外46カ国338都市832拠点のグローバルネットワークにより国際航空貨物輸送や国際海上貨物輸送・ロジスティクス(3PL)を展開。世界五極経営体制により航空会社・船会社の輸送手段を利用した国際・国内貨物の運送請負い(貨物利用運送・輸入混載貨物仕分業務)、航空会社の代理店業務の引受サービスを提供。混載貨物事業(フォワーダー)では日本通運に次ぎ国内2位。2005年商船三井と業務・資本提携。2011年日立物流<9086>と業務提携。2015年シンガポールの物流会社APLロジスティックスを買収(1400億円)。
サガミチェーン(9900)
和食レストランチェーン。東海地区を基盤に関西・関東・北陸で和食麺類のファミリーレストランチェーンを展開。和食・そば「サガミ」を中心に、和食麺類店「味の民芸」、うどん主体・セルフサービス方式の「どんどん庵」、麺類専門店の「あいそ家」等の運営。グループ店舗数は260店舗(2018年3月)。海外は2004年上海への出店をスタートに、中国・ASEAN諸国へ出店を推進。2014年日清食品HDから「味の民芸」を買収。
銘柄概要および業績データの出所はいずれもマネックス銘柄スカウター