北京オリンピック・パラリンピック組織委員会は、先々週の9月7日(金)に、2022年の大会開催に向けたバリアフリー対策のガイドラインを発表しました。
中国では、2012年に、インフラの改善に主眼を置いた「アクセシビリティデザイン規則」が発効しているのですが、今回のガイドラインはハード面だけではなく、ソフト面、サービス面にも重きが置かれており、例えば視覚障害者への競技スケジュール情報の提供や、車いすのレンタルサービス等が盛り込まれています。

今後、大会開催地となる北京市及び張家口市(河北省)は、このガイドラインに基づき、様々な施策を講じることになりますが、大会組織委員会の幹部は、両市の都市計画、交通管制等の機関や、障害者団体との協力が重要と述べ、あわせて、大会に関係するホテル、空港、鉄道駅や公共交通機関などが、ガイドラインに従い、バリアフリー化を推進することに期待を示しています。

北京市の都市計画部門は、近くバリアフリーの実現度合いについて調査を行い、アクションプランの作成と監督システムの構築を図る予定です。
また、スキー競技が行われる張家口市は、地方都市ということもあり、設備等の整備が遅れています。市当局は今後3年間の計画を策定し、バリアフリー化を進めるとしています。
張家口市の都市開発部門の担当者は、ガイドラインに沿う形で、計画から完成まで効率的に実行できるか、課題が山積と述べています。

大会組織委員会の幹部は、ガイドラインが単に2022年の大会の成功にとどまらず、中国全土におけるバリアフリー化の推進をもたらすものになると期待しています。
確かに、大きなイベントはバリアフリー化や環境問題の改善など、社会問題の解決に向けた契機となる可能性があります。
オリンピック・パラリンピック大会のための、あるいは北京市、張家口市での取組みにとどまらず、長期的な、また広域での動きとなることを期待したく思います。

北京でのバリアフリー化の動きはまだまだ不十分で、日本の1980年代くらいの感じです。
道路は車優先で、歩行者は大通りを横断する際、しばしば歩道橋や地下道の利用を強いられます。
また、地下鉄駅でも、最近の新路線ではエスカレーター、エレベーターが整備されていますが、事務所最寄りの駅など、古い路線の駅では昇りのエスカレーターのみで、さらに一部には階段が残るなど、バリアフリーには程遠いのが現状です。
さらに、事務所周辺の歩道には点字ブロックがあるものの、剥がれて途切れている箇所があるなど、メンテナンスが不十分で利用できない状態のところも多いです。
ハードとソフトの両面で、まだまだ改善が必要で、関係機関の努力に加え、何よりも市民の理解と意識の向上が求められるところです。

2022年までに、どこまでの改善、向上が図られるのか、見守っていきたいと思います。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト