中国のオンラインゲーム会社は次々と2010年第1四半期の業績を発表していますが、業界全体の業績は予想を下回っています。米国にADR(米国預託証券)を上場している中国ネットゲーム業界3位の網易(NTES)の2010年第1四半期の売上は同55%増の1.75米ドルであり、アナリストらの平均予想である1.86米ドルを下回っています。特別収入を除いた一株当たり純利益(EPS)は51セント、2009年第1四半期の45セントより拡大していますが、アナリストの平均予測である61セントを下回っています。一方、業界4位の完美時空(PWRD)の第1四半期のEPSは84セント、2009年第1四半期の58セントより上昇し、アナリストの平均予想をギリギリに達しています。しかし、売上は同47%増の8160万米ドルであり、予測を下回っています。また、2010年第2四半期の業績成長予想は14%~20%であり、同社のこれまでの売上成長率でもっとも低い水準となっています。網易、完美時空のほかに、捜狐(SOHU)の子会社 暢遊(CYOU)、金山軟件(3888)も2010年第1四半期で失望決算を発表しました。業界全体の成長減速が失望業績に繋がっています。

過去数年で、中国オンラインゲーム業界は年間50%~70%のスピードで成長していましたが、市場競合の激化、及び政府の監査が厳しくなっていることに伴い、業界全体の成長率が減速しています。2011年、業界全体の成長率は20~30%であるとアナリストらは予測しています。さらに、金山軟件の求伯君主席は20%の成長率は適正な成長率だと指摘しています。ちなみに、同社の2009年の成長率は25%でした。こういった理由から中国オンラインゲーム企業の株価が全体的に下がっています。最大手の騰訊(0700)も、特段良くない決算が発表されたわけではありませんが、業界全体の成長鈍化が懸念され、6月10日(木)には7.3%の大幅安となりました。

もともとこのネットゲーム業界は、どの企業も利益率が高く、バランスシートは健全で、おまけに高い成長スピードを誇っていました。当然株価もよく上がりました。ところが昨年秋ごろからあまりにも急成長する中国ネット業界に対して政府から規制がいろいろと入ってきました。ゲームのコンテンツに制限がなく、ゲームを通じて入る様々な思想や、暴力、性描写の問題もあるでしょう。これだけ急速に何千万人というユーザーに影響を与えることへの脅威を政府は感じだしたのか、まず外国企業の参入を規制し、また続々と新規参入する業者に対し、無許可運営だとして49のオンラインゲームを停止させもしました。これらの規制が直接業界上位企業に影響を与えた訳ではありません。しかし規制強化の流れから、さらに将来も高成長に影を落とす何らかの規制が出るのではないか、との懸念が広がり出したのです。

ここで注意したいのは、見通しが下がったと言っても、20~30%成長というのは大変強い成長であるということです。いくら鈍化しているとはいえ、現在258億人民元に達した中国ネットゲーム市場が今後縮小すると予想する人はいません。50%~70%成長すると見られていたのが20~30%の成長と見直されている程度なのです。パイが大きくなるのはほぼ確実であり、20%成長といえば他産業ではかなりハイレベルです。GDPが10%成長ですから、中国経済成長率平均の倍のスピードです。ネットゲーム銘柄は、その財務内容にふさわしくないほどの低PERとなり、割安感が増してきていますので、ここで銘柄や業界のことを研究するのも1つの方法だと思います。