注目の米中間選挙の結果が続々と入ってきました。現時点で結果に対する論評は控えますが、今後は相応の荒波を予感させる結果になりそうだと受け止めています。我らが日経平均も神経質な動きとなっています。そもそも日経平均は72,831円の史上最高値をつけた7月初旬以降、70,000円から63,000円のボックス圏で推移していました。それが先月上旬からは先行き不透明感を背景にボックス圏上限から下限に向けてほぼ一方通行の推移になっていたという状況です。直近はボックス圏下限に達して自律反発した格好ですが、今後はこの下限がどこまで機能するのかが試される展開になるのではと考えています。

首相の呼びかけが示した危機感

さて、今回は「サイバーセキュリティ」をテーマに取り上げてみたいと思います。先日、プログラミング言語PHPで重大な脆弱性が明らかとなり、その対応のために多くのWebサイトの利用が一時的に制限されました。この脆弱性は、放置しておくと第三者によるサーバー乗っ取りリスクがあったともされましたが、結果的に脆弱性の修正は迅速に行われ、利用者の不便はあったものの、現時点において大混乱に至るインシデントの発生は抑制されたように思えます。

個人的には、これに関しては高市首相自らが事態を軽視せず、しっかりとした対応を直接呼びかけたことが良かったと受け止めています。こうしたIT関連は門外漢には理解が難しいため、ややもすれば企業経営者は「専門家に丸投げ」し、「うまくやっておいてくれ」という対応になりがちです。日本はサイバー攻撃に脆弱だと指摘する声もありましたが、それが宰相自身の発信で危機感が一気に浸透することになったのだと感じています。

激増するサイバーインシデント。経営層に求められる当事者意識

実際、先日のPHP事件に先立ち、いくつかの企業ではサイバー攻撃によって事業に多大な影響が生じた例も報告されています。ある企業でランサムウェアグループによってサーバーが暗号化されてしまった結果、製品の受注・出荷が停止し、現場では手書き対応などで応急措置が図られたという事件は記憶に新しいところです。つい最近も、運転免許証といった個人データが大量に流出したケースも報告されています。証券会社では顧客のパスワードが流出し、勝手に売買がなされたというケースもありました。

こうしたサイバー攻撃は、かつては個人情報の流出といったレベルの被害が多かったものの、最近は経済活動を機能不全に陥らせたり、勝手に指示を出して被害を加速させるなど、その影響は飛躍的に大きくなってきている実感があります。しかも、こうした領域への知見が乏しい経営者の場合は事態の重大さを直観的に理解できないため、余計に被害を大きくする傾向も見て取れます。

もう今や経営者も「よくわからない」と言い逃れできる状況ではなくなってきているのです。なお、民間企業の調査によると、国内で公表されたセキュリティインシデントの件数は2026年1~9月で607件に達したとしています。2023年が430件、2024年が645件、2025年は594件と、件数は増加傾向にあり、2026年に入ってからはさらにその増加ピッチが加速してきている様子がうかがえます。

「100点満点はない」サイバー防衛、「デジタル化しない」という選択肢は現実的ではない

一方、サイバー攻撃を未然に防ぐのは容易ではありません。多くの対策が講じられてはいますが、それに100点満点はないのです。現時点ではベストであったとしても、半年後には脆弱となっている可能性も十分あります。AIがシステムの穴を時には1分未満で簡単に見つけるようになった現在、そして様々なシステムが日進月歩で進化している状況を考えれば、サイバーセキュリティ対策は賽の河原で石を積み上げるような苦しいものと言えるのかもしれません。

とはいえ、「手に負えない」としてしまうと、ビジネスで甚大な被害を受けるリスクが急増するうえ、そもそもそうした企業と取引しようという顧客も離れることになってしまうでしょう。「ウチはデジタル化しない」という選択肢も、業務効率や顧客の利便性という観点からは現実的ではないと思います。企業においてサイバーセキュリティは「うまくいって当たり前、失敗すると厳しく批判される」という難しいカテゴリーにあると言えるのです。

株式投資の視点:サイバーセキュリティ関連銘柄

では、株式投資という観点ではどうでしょうか。当然ながら、どの企業がどれだけサイバーセキュリティで先行しているかということを外部から定量的に推し量ることはできません。したがって、投資を考えるうえではサイバーセキュリティに関連するサービスを提供する企業群がその対象になります。

王道となるセキュリティ関連サービス企業群

まずは王道ともいえるセキュリティ関連企業群です。具体的には、トレンドマイクロ(4704)、ブロードバンドセキュリティ(4398)などの銘柄が挙げられるでしょう。とはいえ、こうした企業すらもサイバー攻撃を受ける可能性があるのが現実です。これらの銘柄による防衛線が突破された際に、迅速に復旧対応できるような人材を抱えておくことも今後はより重要になってくると考えます。

有事の復旧を支える「IT人材」関連企業

IT領域に強い人材を提供している企業群としては、パソナグループ(2168)、パーソルホールディングス(2181)などの大手に加え、キャリアデザインセンター(2410)、ヒューマンクリエイションホールディングス(7361)、ジェイエイシーリクルートメント(2124)、ユナイトアンドグロウ(4486)、ギークス(7060)、クラウドワークス(3900)、ランサーズ(4484)、ギグワークス(2375)、ギークリー(505A)などの名前を挙げることができます。

社内の防御力を底上げする「リスキリング」関連企業

また、こうした外部人材に頼らなくて済むよう、社内スタッフのスキル向上を図っておく必要もあります。社員のリテラシー強化は、外部からの侵入抑制に寄与するうえ、有事においても臨機応変な対応に繋がるものと予想します。リスキル(291A)、サイボウズ(4776)、リクルートホールディングス(6098)などが、そうしたリスキリング関連企業として挙げられるのではないでしょうか。こうした取り組みは派手ではありませんが、企業の持続可能性という観点でもとても重要と捉えます。SDGsと言えば環境対応のようなステレオタイプな見方もありますが、このような視点もまた、重要なSDGs関連の取り組みと言えるのかも知れません。