日経平均は依然としてすっきりした動きにはありません。先々週(10月5日週)には久々に7万円台を回復したと思いきや、先週(10月12日週)は一日の動きでは歴代3位となる強烈な下げもありました。これまで先行き慎重な見方を続けてきましたが、こうした動きを見る限り、そのスタンスを変更する必要はやはりまだなかったのだと改めて感じています。

ただし、これからは判断が難しくなってきます。11月3日には、株価に大きく影響するであろう米中間選挙が予定されており、その行方次第では波乱の展開となる可能性は否めないと考えます。併せて、米金利動向も読み切れない状況です。今後は日本の政策金利再引上げの蓋然性に加え、対米貿易、安全保障に関する政治的動きが攪乱要因となるシナリオを考えておく必要があるでしょう。実際、10月16日にはWTI原油価格は久々に1バレル当たり100ドルを超えてきました。米中間選挙を控え、様々な歯車が動き始めたようにも見えます。当面は大勢が見えてくるまでの様子見局面と割り切っておきたいところです。

ホルムズ海峡の緊迫と日本のエネルギー調達の現状

今回はその原油市況の上昇を受け、「ホルムズ海峡」をテーマに取り上げてみましょう。言うまでもなく、ホルムズ海峡はペルシャ湾とオマーン湾・インド洋を区切る海上輸送の要衝です。ペルシャ湾からは大量の原油が世界中に輸送されるため、ここが封鎖されたり、通航が停滞したりすると世界的な影響が計り知れない「チョークポイント(急所)」と位置づけられています。

この要衝が2026年2月末の米国・イスラエルによるイラン攻撃をきっかけに、一時は封鎖状況に陥りました。9月末時点でホルムズ海峡を通過する原油・石油製品の通過量は軍事衝突前の約8割まで回復していますが、まだ正常化には至っていない状態です。

これまでホルムズ海峡を経由する原油は約9割がアジアに向かっていました。その内訳は、中国向けがおよそ4割、日本・韓国・インド・その他がそれぞれ15%程度ずつという構成です。ホルムズ海峡の停滞を受け、多くの国は備蓄原油の放出に踏み切り、同時に代替調達先、代替調達ルートの開拓が急務となりました。日本もその例に漏れず、軍事衝突前と比較して原油備蓄量は約17%減少し、代替として米国産原油の調達量は10倍超に膨らみ、ホルムズ海峡を経由しない迂回ルートの整備・建設も急いでいます。粗製ガソリンとも呼ばれるナフサもほぼ同様の展開にあり、かつてほどの切迫感はないものの、依然として不安定な状況が続いているといえるでしょう。

緊急対応から常態化へ:地政学リスクの常態化と高止まりする原油市況

問題は今後です。現在は特殊事情下にあるため関連諸国・企業は緊急対応を優先する姿勢にあり、その結果、日本でも混乱は最小限に抑えられてきました。しかし、特殊事情が常態化すれば、そうした国・企業も経済合理性を無視できなくなります。かといって、中東情勢が沈静化したとしても、一度大きく揺れた振り子が全く同じ位置に戻ってくるとも限りません。

地政学リスクの顕在化を目の当たりにした以上、これまでとは違う、しかし安定的なサプライチェーンの構築が必要になったことは議論をまたないでしょう。切迫感は抑制されたとはいえ、原油市況は9月末時点で1バレル当たりおよそ90ドル。直近では100ドルを超えており、軍事衝突前と比べて5~6割高い水準が続いています。市況からは情勢の先行きを依然として楽観視していない様子が見て取れます。

サプライチェーン再構築がもたらす中長期のビジネスチャンス

当然、そうした先行き不透明感の中、企業は原油・ナフサに限らず、様々な重要物資について、これまで以上に多層多重的な供給体制の構築を、今後は模索することになるでしょう。これは近年で一般的となった経済安全保障という概念とも重複するものであり、以前に当欄の「【日本株】ハイテク産業のビタミン「レアアース」とは?中国依存からの脱却と注目の日本企業」(2026年8月19日付)でも取り上げたレアアースも、その一例と位置付けられます。

こうした変化は多くの企業にとって新たなコスト負担となりますが、新しい仕組みの構築は同時にビジネスチャンスの芽ともなるはずです。古くは出光興産(5019)創業者の出光佐三氏が石油禁輸措置を受けていたイランよりガソリンの輸入を断行した日章丸事件のように、です。このサプライチェーンの再構築が大規模な構造転換を促すきっかけとなれば、資本市場でも息の長いテーマとして注目される可能性は十分にあると言えるでしょう。ただし、これらの変化はなかなかすぐには見えてこない性質のものです。その結果、変化が顕在化した時には、企業の底力として既に十二分にその効果を発揮していたということになると予想します。

「期待先行で顕在化待ち」の銘柄選定

では、株式投資という観点ではどうでしょうか。前述の通り、進捗を随時確認できるものではなく、成果が出てきた時に初めて顕在化する公算が大きいため、投資戦略としては典型的な「期待先行で顕在化待ち」というスタイルになると位置づけます。これは極めて先進的な技術の実用化と同じアプローチとなぞらえることができるかもしれません。

ただし、カギを握るのはテクノロジーブレイクスルーではなく、世界中に散らばった様々なピースを斬新な発想で繋ぎ合わせていく構築力になるはずです。そうした視点から候補となる企業群を探すとすれば、まずは世界中に情報網を張り巡らせている総合商社が挙げられるでしょう。中でも資源・エネルギー領域では、三菱商事(8058)や三井物産(8031)の存在感が図抜けていると認識されています。

次いで、エネルギー資源を供給する石油元売り企業群です。彼らは国産ナフサメーカーでもあり、原油調達元や新たな調達ルートの確保が焦眉の急であることは間違いありません。主要企業はENEOS ホールディングス(5020)、出光興産(5019)、コスモエネルギーホールディングス(5021)となります。ただし、彼らはサプライチェーンの確保・構築で鎬を削る関係にあり、供給体制の構築状況次第では優劣が生じる可能性があることは留意しておくべきでしょう。

そしてそのナフサを原料に、より下流工程を担う石油化学各社もその対象となるはずです。具体的には、三菱ケミカルグループ(4188)、三井化学(4183)、住友化学(4005)、東ソー(4042)などが挙げられます。

これまでは収益力などが業界勢力図を変化させるきっかけとなっていましたが、今後はサプライチェーンの刷新もまた勢力図を塗り替える新たなきっかけに浮上してきたと受け止めています。