人工知能(AI)が目覚ましい進化を遂げるなか、それを支える半導体への注目が高まっています。半導体製品を大きく分けるとIC(集積回路)とIC以外に分けることができますが、本稿では前編として投資家としての視点からICについてみていきます。

4つのセグメントに分類されるIC(集積回路)

ICとは電気を流したり止めたりするスイッチ(トランジスタ)や電気を蓄えるコンデンサといった様々な電子部品を1枚のシリコンチップに搭載した電子回路を指し、こうした電子部品の集積度を高めたものを大規模集積回路(LSI)と呼びます。このICを詳しくみていくと、(1)ロジック、(2)マイクロ、(3)メモリー、(4)アナログの4セグメントに分類されます。

(1)IC:データセンターで用いられるロジック

ロジック半導体とはデータ処理を担う半導体です。「GPU(画像処理半導体)」はこのロジックに分類され、AIの膨大な計算を高速で処理できることから、データセンターで用いられています。AIの学習工程においては似通った膨大な単純計算を同時にこなす必要があることから、多数の演算器を並列に並べた構造を有しているGPUが性能を発揮します。

ロジック半導体は既製品として供給される汎用ICと顧客の注文に応じて製造するカスタムIC(ASIC)があり、製品別でみるとICのなかで最大の約3,000億ドルの規模を有しています(2025年時点)。今後は、IT大手によるデータセンター投資に伴い、AIサーバーで使用されるGPUなどAI半導体をけん引役に、成長が続くと想定されています。主要プレイヤーとしては、エヌビディア[NVDA]や アドバンスト・マイクロ・デバイシズ[AMD]、ブロードコム[AVGO]があげられます。

【図表1 】ロジック市場の成長率
出所:世界半導体市場統計(WSTS)よりマネックス証券作成。2026年以降はWSTS予想。

(2)IC:パソコンやサーバーの中枢となるマイクロ

プログラム次第で様々な処理を汎用的にこなすのが「マイクロ」です。代表例は、パソコンやサーバーの中枢となる「マイクロプロセッサー(MPU、いわゆるCPU)」です。今後の見通しとして、AIサーバーの普及に伴う買い替え需要に加え、人間に代わって計画立案や意思決定を行い、自律的に行動する「エージェンティックAI(自律型AI)」の普及が中長期の追い風です。

この分野ではインテル[INTC]が代表企業となります。また、マイクロには自動車・家電の制御を担うマイコン(MCU)も含まれ、ルネサスエレクトロニクス(6723)やマイクロチップ・テクノロジー[MCHP]が企業例としてあげられます。

【図表2】マイクロ市場の成長率
出所:世界半導体市場統計(WSTS)よりマネックス証券作成。2026年以降はWSTS予想。

(3) IC:情報を記憶し、データを蓄積するメモリー(DRAMやNANDフラッシュメモリーなど)

メモリーは情報を記憶する、すなわちプログラムや処理対象となるデータを蓄積します。具体的には、性能と容量のバランスに優れるDRAM(スマートフォンで、アプリを起動し処理する際の一時記憶などで使用)や低速ながら安価なNANDフラッシュメモリー(スマートフォンの写真保存などで使用)があります。

DRAMでは韓国のサムスン電子やSKハイニックス[SKHY]、NANDフラッシュメモリーでは、両社に加えてキオクシアホールディングス[285A]が高いシェアを握っています。AIの進化に伴い、複数のDRAMチップを垂直に積み重ねることで、超高速・大容量のデータ転送を実現するHBM(High Bandwidth Memory)への需要も高まっており、2026年は成長加速の公算が大きくなっています。HBMでは、SKハイニックス[SKHY]やマイクロン・テクノロジー[MU]が有力企業となっています。

HBMの台頭によってメモリー業界は構造変化の兆しをみせています。従来のDRAMとは異なり、HBMでは複数年の長期供給契約(引き取らなくても代金を支払う『テイク・オア・ペイ契約』)が一部で導入され、業績の波が抑えられる可能性が出てきています。一方、需要が少数のハイパースケーラー(巨大IT企業)に集中するため、どこか1社でもAI投資を減速させれば直撃を受ける顧客集中リスクや、企業のAIコスト削減といった需要動向は注視すべきと考えます。

【図表3】メモリー市場の成長率
出所:世界半導体市場統計(WSTS)よりマネックス証券作成。2026年以降はWSTS予想。

(4)IC:光や音、圧力などの信号変換を行うアナログ

アナログは、連続的に変化する情報 (アナログ信号)を処理する半導体です。具体的には、光や音、圧力などの信号の変換や電子機器内の電源の管理(電流・電圧の制御)を担います。2026年は2025年から伸びが高まる見通しですが、他のIC市場と比較すると比較的抑制された成長ペースとなる見込みです。アナログ半導体については、次世代への切り替え(高性能化)や激しい市況変動にさらされるロジックやメモリーとは対照的に、製品寿命が長く、相対的なディフェンシブ性を備えているとされます。

今後については、自律型ロボティクスや完全自動運転といったフィジカルAIの台頭もアナログ半導体への追い風として期待されます。GPUなどロジックが「0と1」の不連続なデータで計算を行うのに対し、現実世界の光や音、温度や速度といった情報は、連続して変化します。

AIが現実世界で自律的に動くためには、センサーが検知した連続的な情報をAIが理解できるデジタルデータへ変換し、逆にAIが出したデジタルな指示通りに車輪やモーターを動かすための適切な電圧や電流に調整しなければなりません。このデジタルな指示と、現実世界の物理的な動きを繋ぐ役割をアナログ半導体が担っており、中長期的な成長が期待されます。

アナログ半導体に関連する企業としては、テキサス・インスツルメンツ[TXN]やアナログ・デバイセズ[ADI]、モノリシック・パワーシステムズ[MPWR]があります。

【図表4 】アナログ市場の成長率
出所:世界半導体市場統計(WSTS)よりマネックス証券作成。2026年以降はWSTS予想。

成長力と利益率で各製品・各企業を取り巻く環境を捉える、それぞれの注目企業は?

各企業の売上高成長率と営業利益率を確認すると、各製品分野と企業を取り巻く環境の一端がみえてきます。

ロジック関連:エヌビディア[NVDA]、売上高成長率・営業利益率ともに高水準

近年の半導体市場をけん引してきたロジック関連については、エヌビディア[NVDA]が80%超の売上高成長率を遂げているうえ、営業利益率は約60%と両指標の高さが際立ちます(図表5)。

【図表5】ロジック関連企業の売上高成長率(横軸)と営業利益率(縦軸)
出所:ブルームバーグのデータをもとにマネックス証券作成。売上高成長率は直近四半期の前年同期比、営業利益率は直近4四半期の営業利益÷直近4四半期の売上高、を用いて計算。いずれも全社ベースの数値で表示。円の大小は当該製品分野内での時価総額の大きさを表す。AMDはCPU関連、ブロードコムはソフトウエア関連がそれぞれ売上に含まれるものの、説明のため便宜的にロジックに掲載。

マイクロの代表企業[INTC]、コスト削減も相まって復調傾向

工場を持たずに製造はファウンドリー(半導体受託製造)に任せるアセットライトなビジネスモデルが高収益に寄与していると考えられます。マイクロの代表企業インテル[INTC]は、ファウンドリー事業の不振により2025年4-6月期に落ち込んだものの、その後はコスト削減も相まって復調傾向です(図表6)。

エージェンティックAIの登場によって推論向けの半導体へのニーズが高まるなか、インテルの経営陣は効率性の高さを理由に必要となるCPUとGPUの比率について従前の1対8から1対4とCPUの比重が高まっている、との見方を示しています。

【図表6】マイクロ関連企業の売上高成長率(横軸)と営業利益率(縦軸)
出所:ブルームバーグのデータをもとにマネックス証券作成。売上高成長率は直近四半期の前年同期比、営業利益率は直近4四半期の営業利益÷直近4四半期の売上高、を用いて計算。いずれも全社ベースの数値で表示。円の大小は当該製品分野内での時価総額の大きさを表す。

メモリー関連企業:マイクロン、キオクシアは売上高が2倍以上で需要の強さも

メモリー関連企業ではマイクロン・テクノロジーの売上高が3倍超、キオクシアホールディングスも約2倍となるなど需要の強さが垣間見え、営業利益率も軒並み20%以上と本業で稼げています。キオクシアは時価総額が競合比で小さい点も目立ちます(図表7)。

【図表7】メモリー関連企業の売上高成長率(横軸)と営業利益率(縦軸)
出所:ブルームバーグのデータをもとにマネックス証券作成。売上高成長率は直近四半期の前年同期比、営業利益率は直近4四半期の営業利益÷直近4四半期の売上高、を用いて計算。いずれも全社ベースの数値で表示。円の大小は当該製品分野内での時価総額の大きさを表す。

アナログ:売上高成長率と営業利益率の高さが目立つアナログ・デバイセズ[ADI]

アナログ関連企業では、アナログ・デバイセズ[ADI]の売上高成長率と営業利益率の高さが目立っています(図表8)。同社は自動車をはじめとする数万社に及ぶ顧客を抱え、アナログ信号とデジタルの変換を担うコンバータチップにおいて高い市場シェアを有しており、成熟分野とみなされることもあるアナログ半導体企業ですが、今後の成長が予想されています。

【図表8】アナログ関連企業の売上高成長率(横軸)と営業利益率(縦軸)
出所:ブルームバーグのデータをもとにマネックス証券作成。売上高成長率は直近四半期の前年同期比、営業利益率は直近4四半期の営業利益÷直近4四半期の売上高、を用いて計算。いずれも全社ベースの数値で表示。円の大小は当該製品分野内での時価総額の大きさを表す。

ロボット自動化や完全自動運転などアナログ半導体分野も注目される可能性

近年はエヌビディアをはじめとするロジック関連企業への注目が高まりました。足元ではメモリー需要の増加によってマイクロン・テクノロジーやキオクシアホールディングス、2026年7月10日に米国上場を果たしたSKハイニックス[SKHY]などに熱い視線が注がれています。

ただ、先々はロボット自動化や完全自動運転といった成長の種を有するアナログなど他分野が脚光を浴びるかもしれません。また、各半導体製品を手掛ける企業の動向に目を向けることで、資産形成の手がかりを掴んでいただける可能性もあるかと思いますので参考にしていただければと考えます。

【図表9】ご参考:各銘柄の株価騰落率
出所:ブルームバーグのデータをもとにマネックス証券作成。2026年7月20日時点。