先週のレポートではこう述べた。

ファンダメンタルズの改善を市場は無視することが往々にしてある。悲観心理が事実から目を背けさせる。しかし、そうしたところが絶好の買い場であった。過去何度も体験してきたことだから、いまさら言うまでもない。

その後もファンダメンタルズの改善が続いている。今週初めに発表されたGDP改定値はエコノミスト予想の上限だった3%に大きく上方改定された。昨日発表された機械受注は前月比11%増だった。

その前に発表された8月の工作機械受注額は、外需(輸出)が前年同月比4.4%減となった。前年同月を割り込むのは21カ月ぶり。これを受けてオークマやツガミ、安川電機など省力化投資関連株が売られたが過剰反応だろう。確かに外需は前年割れとなったが全体の受注額は5.3%増の1405億円と21カ月連続の増加だった。

その外需にしても、8月単月としては昨年に次ぐ過去3番目の高水準だった。工作機械の今年8月の全体の受注額は8月としては過去最高である。日米欧で先端産業向けを中心にいまだ好調な受注が続いている状況だ。

昨日は米政府が中国に貿易問題をめぐる閣僚級協議の再開を打診との報道で、通商摩擦への過度な警戒感が後退し株価が上昇した。世界経済・市場の最大の懸念となってきた米国発の貿易戦争だが、各国との通商交渉は着実に進展し、落としどころを探り始めているように見える。

米国とカナダの北米自由貿易協定(NAFTA)改定交渉。ワシントンで交渉に臨んでいるカナダのフリーランド外相は「非常に生産的かつ建設的な話し合いを持った。雰囲気は引き続きなごやかであり、双方とも友好的だ」と発言。「通商交渉では当然ながら、決まる時は一挙に決まる」と述べた。

「EUとの交渉も進展」とブルームバーグが報じている。米通商代表部(USTR)はEUとの通商協定について、大統領貿易促進権限(TPA、ファストトラック)法の規定に基づく議会承認を目指す方針を示した。ブルームバーグによれば、この発表は、米国とEUが通商交渉を順調に進めていることの表れだという。

先週も触れたが日米のFFRも月内に決着するだろう。次回の会合は21日との観測がある。自民党総裁選の翌日だ。

9月のメジャーSQの値は23,057.94円(速報)。年初来高値をつけた1月のSQ値以来初めて2万3000円台に乗せた。本稿執筆現在(午前10時)では日経平均はこのSQ値を超えられず、「幻のSQ」となっている。

以前も書いたが、「幻のSQ」は相場の重石、という説があるが、イメージ先行であって実際にはそんなことはない。SQ値がまず2万3000円台を回復、日経平均も早晩、2万3000円台を超えてくるだろう。

原動力は米国株の上昇だと思う。米国株の先行指標とされるダウ輸送株平均が今週、1月につけた高値を払って、また史上最高値を更新してきた。ダウ平均やS&P500も、これを追随する動きとなるだろう。

月曜日のFinancial Timesにこういうチャートが載っていた。S&P500の四半期ごとのパフォーマンスを大統領の任期4年に合わせて見ると、大統領の2年目、すなわち中間選挙を控えた年の第2、第3四半期がマイナスのリターンでもっとも悪い。政治的な不透明感が株価の重石となるからだ。

ところが今年はそうなっていない。第2四半期は2.9%上昇、第3四半期も8月末に最高値をつけ、まもなくその高値を抜く勢いだ。過去、いちばんパフォーマンスが良いのは、その後、2年目の第4四半期である。いうまでもなく、政治的不透明感が払しょくされることが背景だろう。

 

いよいよ9月も後半に入る。通商交渉を巡るニュースフローも多くなるだろう。その先には、米国株がもっとも高いパフォーマンスとなる大統領2年目の第4四半期が始まる。今年も米国株は高値追いの展開となるだろう。米国株の先行指標とされるダウ輸送株平均の高値更新がその兆しである。

市場では半導体株に悲観的な見方があるが、何度も繰り返している通り、AI、IoT、自動車の電装化、ビッグデータのこの第四次産業革命が進む中、半導体・電子部品の需要は高まることがあっても落ちることはない。一時的な需給の調整はあっても、基調として低迷することはないだろう。

時価総額が1兆ドルを突破したアップル。日本企業は足元にも及ばないが、株価の動きならアップルに引けをとらない銘柄がある。アップル関連銘柄の代表であるTDKは過去5年で株価がおよそ3倍になった。チャートをアップルと重ね合わせるとほぼ同じ動きである。

 

日本にもこういう銘柄がある。半導体・電子部品関連の押し目は良い投資機会と考える。同様に省力化投資関連株の低迷もよいチャンスだ。オークマは予想PERが10倍台にまで低下した。割高感は薄れ、むしろ底値に近いと考えられる。