FXトレードは為替のチャートだけを見ていてもなかなか勝てません。大きなトレンドをいち早く見つけるためには、金利動向や、株式、商品市場などあらゆる市場の動向をウォッチしておくことが肝要です。特に商品市場は、他市場と比べるとその取引規模が大きくないことから、変化の兆候が表れやすいという特徴があります。コモディティ需要というのは景気の先行きを占うものでもありますので、特に銅価格は「ドクターカッパー」と呼ばれ、金融関係者らは定期的に銅価格をウォッチしています。

商品は「物」ですから、通貨の価値が下がれば相対的に上がります。反対に通貨価値が上がれば商品価格は下がります。円高の時代に日本がデフレだったのはこのためですね。従って米ドルベースで見る国際商品価格は、商品価格が上がれば米ドル安、商品価格が下がれば米ドル高となる関係にあります。しかし、原油は米国のシェールオイル生産動向や、OPECの減産、増産などによって大きく動きますし、穀物価格は天候によって大きく動きます。為替要因だけが商品価格を形成しているわけではありません。相対的な商品価格の動向を知りたい場合は「CRB指数」という米国内の各商品取引所等で取引されている先物取引価格から算出される国際商品先物指数を見てください。この指数はエネルギーや貴金属、農産物などのコモディティを幅広く網羅し、世界的な物価や景気の代表的な指標として使われています。特に製品原料として使う商品を多く含むため、インフレ動向の先行指標として国際的に注目されているのです。CRB指数が上昇傾向にあれば米ドル安傾向、CRB指数が下落傾向であれば米ドル高と判断することができます。

足下でCRB指数は2017年6月を底値に約1年間上昇を続けたトレンドに陰りが見え始めました。2018年6月中旬に上昇トレンドラインを下方向に抜けたような恰好です。この上昇トレンドが崩れたのだとすると、この先に訪れるのはさらなる米ドル高の可能性ということになりますが、明確に下落トレンドが発生したとも判断しがたい形ですので、1年もの上昇トレンドが一服し、もみ合い期間に入っただけかもしれません。

大局ではCRB指数を見ることが重要なのですが、足下では原油価格は上昇基調、穀物は大幅下落と商品によってまちまちです。原油価格はOPECの減産やシェールオイルの生産動向が価格に大きな影響を及ぼしており、大豆やトウモロコシなど穀物価格は、米中貿易摩擦の影響で売られ過ぎているという側面があって、米ドルの影響よりも政治的なファクターによって動いている側面が大きいためです。現在、比較的米ドルとの相関がきれいに出ているのはゴールド価格。ゴールドは現在、米ドル高にキレイに逆相関となって崩れてきています。

ゴールドだけではありません。7月3日、NY市場でプラチナ価格が800米ドルの大台を割り込み2008年来の安値に崩れたほか、東京商品取引所(TOCOM)で円建てプラチナ先物価格が3,000円を大きく割り込み2,842円まで下落、こちらも2009年来の安値に売り込まれました。特にTOCOMのプラチナ市場は、直近平常時の4倍あまりにも上る3年ぶりの突出した出来高を記録しました。相当な損切が入って急落したものと考えられます。出来高から考えると、TOCOMのプラチナ市場は短期的にはセリングクライマックスを見た可能性が高いとみられます。また、プラチナの平均生産コストは900米ドル台で、800米ドル台を下回る水準まで売られているのはやや行き過ぎに見えます。円建て、米ドル建てのプラチナ価格が短期的に底入れし反発する可能性がある、と仮定するならば、米ドルが下落する可能性がある、と考えることもできます。ゴールド価格も足下で売りにさらされており、短期的には反発しそうなレベルにあります。

また、先述したドクターカッパー、銅価格も足下では大きく下落してきましたが、2016年年初の大底安値から2018年6月につけた高値でフィボナッチリトレースメントを引いてみると、ちょうど38.2%レベルで下げ止まっています。大天井をつけて下落トレンドを形成し始めたという可能性も否定できませんが、38.2%で下げ止まっているということは短期的な反発の可能性がある局面とみることができます。今週から短期的には、商品価格の反騰と米ドル高の一服がみられるかもしれません。そうなれば、通貨市場では、カナダドルや豪ドル、NZドル、南アフリカランドなど資源関連通貨が買い戻されるでしょう。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

TwitterAccount
@hirokoFR