今週は今夜のFOMC、明日のECB、金曜日の日銀の金融政策決定会合と重要イベントが続きます。こうした金融政策の発表に向けてはどのような事前準備が必要でしょうか。

金融政策の転換があれば、金融市場は大きく動きます。しかし、こうした会合で突然に政策の変更が発表されることはあまりありません。事前に要人らが発言することで市場と対話し、市場が混乱しないよう織り込ませていくものです。(黒田バズーカと呼ばれた2013年からの日銀の異次元緩和では市場が予測できないサプライズの発表がありましたが、事前準備がなされていなかった市場関係者、金融機関らから大変不評であったことから市場との対話を求める声が大きくなりました。異次元緩和も6年目に入って、切れるカードもなくなってきたこともあり、今後はサプライズでの政策変更はないと思われます。)

最も重要なのが、市場の事前予想と実際発表される政策、声明文の内容との乖離です。乖離が大きい場合が「サプライズ」として、金融マーケットに大きな値動きをもたらすこととなります。ということで、今週のFOMC、ECB、日銀会合に向けての市場の予想とポイントをまとめておきます。

6月13日(水)FOMC

利上げがほぼ確実視されており、政策金利であるFF金利翌日物誘導目標は現行の1.50%-1.75%から、1.75%-2.00%に引き上げられる見込みです。かつて高金利通貨として人気を博していた豪ドルですが、豪州の政策金利は現在1.5%に長く据え置かれたままで、すでに豪ドルより米ドルの方が金利面での投資妙味が高いのですが、今回の利上げで1.75%-2.00%へと米国の政策金利が引き上げられれば、現在1.75%のNZの政策金利をも上回ることになります。豪ドルやNZドルがかつてのように上昇しないのは、米国の政策金利が上昇し、金利差のインカムゲインの妙味がなくなってしまったからでしょう。

現状のFOMCでは今年3回・4回の利上げ見通しとなっています。前回3月のドットプロットでは年3回(年末時点で2.00%-2.25%)と年4回(年末時点で2.25%-2.50%)がともに6名で同数存在していました。各メンバーの見通しが、今回のFOMCでどのように変化するのかに注目です。年4回(9月も12月も利上げ)見通しが増えて大勢となってくれば、ドル金利上昇圧力が強まり、ドル買いが優勢となる可能性が強いと目されますが、これも事前に予想されているシナリオですので、それほどサプライズということでもありません。ドル金利が上昇しても、金利先高観から株式市場に利食いが旺盛となれば、株から金利に妙味が出てきた債券へと資金シフトが起こる可能性も大きく、そうなれば、金利上昇は抑制されるでしょう。それほど大きなドル高にはならないとみています。

6月14日(木)ECB理事会

ECBは2017年12月まで月額600億ユーロのペースで資産買入れを続けてきましたが、2018年1月から月額300億ユーロに減額するテーパリングを実施しています。現行規模で9月末まで継続することが決定していますが、市場の注目は9月以降。量的緩和がいつ頃どのような形で終了に向かうのか、フォワードガイダンスに示されるのか否かが焦点。先週、エストニア中銀理事が「2019年半ばより前に、高い金利となる可能性がある」と発言したほか、バイトマン独連銀総裁が「年末まででQE(量的緩和政策)終了という市場の期待は妥当」など発言しており、イタリア、スペインの政情不安から売り込まれたユーロは下げ止まって戻り歩調にありますが、南欧危機が燻る中、強気の金融政策発表となるのかどうか、市場は懐疑的で、まだフォワードファイダンス変更を織り込んでいないように見えます。

6月15日(金)日銀金融政策決定会合

政策の変更の予想はほとんどありません。5月の東京都区部の消費者物価の上昇率が0.5%と3カ月連続で縮小していることもあり、6月と7月会合で物価の動向を集中的に点検するとしています。また、現行では2016年9月から長期国債(10年債)利回りをゼロ近傍に誘導するイールドカーブコントロール政策を実施しており、金利に焦点を合わせる政策に変更した結果、日銀による国債購入額が減少しています。これは市場で「ステルス・テーパリング」と呼ばれていますが、この政策は継続されるものとみられ、市場にはサプライズがもたらされることはないと考えています。

市場の織り込みと実際の政策発表の乖離という意味で、大きく動く可能性を秘めているのはECB理事会ではないか、と考えていますが、神経質な値動きに対処するには、くれぐれもポジションサイズを小さくしてリスクを抑えることです。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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