Amazon、Apple、NetflixといったFAANG銘柄が今週に入って、今年の高値を更新する上昇となっていますが、NetflixやIntelは年初から上昇トレンドが続いています。ハイテク銘柄を中心に米株市場への資金流入が色濃くなってきています。

米株市場を押し上げる資金はどこから流れてくるのでしょうか。

アルゼンチンの通貨ぺソは4月下旬~5月初旬のわずか8日間に政策金利を3回も引き上げ40%もの高金利となっていますが、ペソ安に歯止めがかかっていません。

トルコ中央銀行も5月23日緊急利上げに踏み切ることを発表し、トルコの通貨リラは下落に歯止めがかけられたかに見えますが、安値圏でのもみ合いが続いています。トルコは6月24日に前倒しして実施することが決められた大統領選挙への警戒もくすぶっています。

インドネシアもまた、自国通貨安阻止のために5月30日に利上げを実施。5月だけで2回の利上げを実施しています。

足下ではメキシコペソの下落が鮮明となってきました。米国との間で通商問題を抱えている他、7月1日に控えた大統領選挙を控えて警戒感が強まっているようです。

また、インドルピーや南アフリカランド、ポーランドズロチなども下落基調が続いており、一方で、米ドルが上昇基調を続けています。2018年に入って新興国通貨売り、ドル買い基調が鮮明となってきました。

新興国各々に政情不安の高まりやインフレ、対米通商問題などを抱えているため、高金利であっても先行きの不透明感が強いことが資金流出の背景でもあり、必ずしも米ドル投資への魅力の高まりからの積極的ドル高ではないと思われますが、少なくとも米国はしっかりとした景気を裏付けにした利上げサイクルに入っていることが、逃げだした資金の受け皿になっていると考えられます。

国際金融協会(IIF)によると、新興国市場からは4月半ば以降、200億ドル(約2兆2,000億円)余りの資金が流出していることが確認されています。

また、資金流出は新興国からだけではありません。

EU最大の経済大国ドイツの2018年1-3月期GDP国内総生産成長率は急減速。財政支出と輸出減少が要因とされていますが、2017年10-12月(第4四半期)の半分の成長ペースとなり市場を驚かせました。同じくユーロ圏の1-3月期のGDP改定値は前期比0.4%増と速報に一致も前四半期の0.7%増から大きく低下しており、足下で欧州圏の経済指標の悪化が目立ち始めています。景気の先行き不安が燻り出したところに、イタリアの政治リスクからイタリア国債が急落、マーケットはイタリア国債を売り、ドイツ国債や米国債にシフトする動きを加速させました。これが5月最終週の世界の株式市場の下落の引き金ともなりましたが、欧州圏からも資金が流出しているのです。

新興国、欧州圏から流れ出た資金は、米ドル、そして米国債に向かった結果、ドル高が進み、また、米長期金利の上昇を抑制しています。5月半ばに3.1%台にまで上昇した米長期金利は、イタリア政局混乱の際の米国債への資金流入で2.8%台にまで急落。これまで米国株式市場の警戒要因であった米金利上昇による株価下落の懸念が後退する結果となりました。

イタリアの政局混乱の鎮静化で、逃げ出した資金が向かったのが、時価総額が大きく業績が好調である米国株という流れです。現状では米国独り勝ちの様相を呈し始めたように見えます。

6月1日に発表された5月の米雇用統計やISM製造業景況指数が大変強い結果であったことなどから、米長期金利は反発基調にありますが、2.9%台まで。3%大台回復には至っていません。日米金利差の拡大を好感して104円台から上昇トレンドを形成してきたドル/円相場は3.1%まで長期金利が上昇した時には111円台まで高値がありましたが、米金利が3%の大台を回復できずにいる現状では、さらなるドル高円安が期待できそうにありません。

6月は今週7日の日米首脳会談をはじめ6月12日の米朝首脳会談、6月13日のFOMCでの利上げ予想、6月22日のOPEC総会などイベントが多く、リスクを警戒する向きも少なくないのですが、2017年がそうであったように、リスクにかけてショートした向きが踏みあげられて上昇が加速するというシナリオも考えられます。イベントリスクが顕著とならなければ、マネーの潮流は、米国への資金回帰です。よって、金利は抑制的となり業績好調な株が上昇となるリスクテイクのセンチメントが、円高リスクも後退させているため、ドル/円相場は膠着の様相が強まると考えています。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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