今週からGWです。日本のGWがマーケットに影響があるとは思えませんが、日本の株式市場が祝日でクローズしている間も海外市場は動いています。特に今年は5~6月に政治・地政学リスクが多く、海外市場での相場の急変の可能性は否定できません。為替市場は祝日でも動いていますが、本邦機関投資家勢、輸出入の実需筋も長期休暇に入るため、東京時間は商いが薄く思わぬ乱高下のリスクがあります。

①米朝首脳会談に向けて

トランプ大統領は5月か6月上旬に米朝首脳会談を実施したい旨を表明しています。ポンペオ米中央情報局(CIA)長官はすでに北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と会談し、北朝鮮で拘束されている米国人3人を米朝首脳会談に合わせて解放することが可能と伝えたと報じられています。同時に核・弾道ミサイル実験の中止も表明しており、現状では平和裏に米朝首脳会談を迎えることができるという思惑も強く、マーケットの懸念は後退しつつあります。米国は北朝鮮の歩み寄りを歓迎しつつも、トランプ大統領は朝鮮半島の非核化という目標が達成できないと判断すれば会談の途中でも協議の席を立つと発言しています。米朝首脳会談実施までには、主要国トップ会談が矢継ぎ早に予定されており、事態は大きく動くだろうことは予想できるのですが、必ずしも全て順調にことが進み平和裏に解決できるという保証はありません。トップ会談前後には様々な報道がマーケットをかく乱する可能性がありますので、注意が必要です。

主なトップ会談スケジュール

4月27日 南北首脳会談

5月9日 日中韓首脳会談

5月24~26日 日露首脳会談

6月上旬迄 米朝首脳会談

6月 日朝首脳会談?

②イラン核合意破棄リスク

2015年7月、イランは、米国・英国・ドイツ・フランス・中国・ロシアの6か国との間で核開発を少なくとも10年にわたり凍結することで合意。対価としてイランに実施されてきた経済制裁が順次解除されることなり、イランとの取引が禁じられていた原油貿易が復活しています。資源エネルギー省の2017年資料では2015年のイランの原油生産量は日量460万バレル。世界第4位の原油生産国であり、イランの原油生産と世界への輸出は原油価格へ与える影響が大きいといえます。

しかし、この核合意に暗雲が。トランプ米大統領は今年1月、核合意に基づく対イラン制裁解除を継続する一方で、弾道ミサイル開発の制限が含まれていない点などを問題視。核合意の修正、追加合意の必要性に言及しました。トランプ大統領は、核合意離脱・破棄の判断期限を5月12日に設定していますが、制裁決定はEU28加盟国の全会一致が条件となるため、米国はイランとEU側へ再交渉を求めています。交渉の結果、修正ができなければ米国は核合意を離脱すると表明しています。

核合意が破棄されればイラン産原油の輸出を対象とした制裁が復活する可能性があるということです。足元で原油価格が上昇している背景には、こうしたリスクへの警戒からファンド筋が原油を買い上げているという指摘もあります。

③米大使館エルサレムへ移転

トランプ大統領は昨年12月にエルサレムをイスラエルの首都と認定。米国は、イスラエル建国が宣言された5月14日に合わせて米大使館をテルアビブからエルサレムに移す計画です。

エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラムの三大一神教のそれぞれにとっての聖地ですが、1967年から国連決議に反しイスラエルがエルサレムの東半分を占拠しています。

米国大使館のエルサレム移転は、米国がイスラエルによる占領政策を容認するものだとして、イスラム諸国からの反発は必至。イスラム諸国を巻き込み中東を不安定化させると懸念されています。中東リスクは原油価格にも影響が及ぶ可能性があるだけでなく、米国を狙ったテロのリスクも指摘されています。

このように重要な政治イベントが重なる5月。それぞれの期日が近づいてくるとトランプ大統領のTwitter初め、各所からの報道も増えてきます。これがマーケットを大きく揺るがす可能性が大きく、GWの長期休暇を前にリスクポジションは極力小さくしておくことが望ましいと考えています。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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