本欄の 4月25日更新分において「ドル/円は110円処を一旦試す展開!?」などと述べました。実際、ドル/円は5月2日と5月10日に一時的110円台に乗せる場面があり、執筆時においても109円台前半の水準で高止まりの状態を続けています。ただ、市場の一部では「ミニ・ダブルトップ形成」の可能性が囁かれていることも事実で、当面は戻り一巡から一旦調整の可能性も一応は視野に入れておく必要があるものと思われます。
一つには、やはり米10年債利回りの足下での推移において"3%の壁"がいかにも厚いということがあるでしょう。5月4日に発表された4月の米雇用統計における「平均時給」の伸び(前年同月比+2.6%)を見ても、先週10日に発表された4月の消費者物価指数(コア)の伸び(前年同月比+2.1%)を見ても、いまだ米10年債利回りが3%台にしっかりと乗せて行くには少々力不足との感もあります。
結果、5月に入って年初来高値を更新してきていたドル指数(ドルインデックス)も足下で頭打ちの状態になってきており、その分当然のことながらユーロ/ドルの下げも目先一巡、先週10日以降は一定の戻りを試す展開となってきています。
少し振り返ると、ユーロ/ドルは4月23日に一目均衡表の日足「雲」を下抜け、その翌々日(25日)以降は一つの節目である1.2200ドル処や3月1日安値(1.2154ドル)をも次々と下抜け、そこから一段と下げに弾みがつく展開となりました。
下図に見るとおり、5月に入るとユーロ/ドルはついに重要な心理的節目である1.2000ドル処をすんなりと下抜け、ほどなく1.1900ドル処をも一旦は下抜ける場面がありました。思えば、ユーロ/ドルは年初から4月下旬あたりまで長らくもみ合いながら横這いで推移する展開を続けていたわけですが、その当時の値幅と同じ値幅を節目の1.2200ドルから下方にとった水準が大よそ1.1900ドル前後の水準となることを考えると、このあたりで一旦は下げ一巡となる可能性もあると見られていました。
実際、ユーロ/ドルは1.1900ドル処を一時下抜ける展開となった頃から徐々に下げ渋る展開となり、目下は4月下旬以降に上値を押さえ続けていたレジスタンスラインをも一旦上抜けてきています。昨年11月安値から今年2月高値までの上げ幅に対する61.8%押しが1.1900ドル台前半の水準に位置することもあり、やはりここは目先底入れから反発へと転じやすいところだったと見ることができそうです。
もっとも、最近はユーロ圏の域内景気の先行きにやや陰りが見え始めてきていることも事実で、このところの市場では「欧州中央銀行(ECB)による量的緩和幕引きの示唆は7月まで待つ方向」との見方も強まっています。よって、たとえドルの戻りが足下で一巡したとしても、そこから一気にユーロの戻りが急になるというわけでもないでしょう。
むしろ、当面のユーロの戻りが限定的なものに留まり、再びユーロ/ドルが1.1900ドル処をクリアに下抜けるような展開となれば、そのまま1.1600ドル処や昨年11月安値=1.1554ドルを試す展開となる可能性もあり得るものと、一応は警戒しておく必要があるように思われます。むろん、その場合は一方でドル/円が再び110円台に乗せてくる可能性もあり、ここは一つの正念場として慎重にドルの行方を見定めたいところです。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役