本欄の 4月11日更新分において、筆者は昨年の11月初旬から続いていたドル/円の「高値切り下げパターン」が幕を閉じた可能性に注目し、当面は「108円手前の水準というのが一つの壁であり、それだけに同水準を上抜けるような展開となれば、いよいよ本格的なリバウンド相場が展開されるようになる」と想定しました。

その時点で、すでに21日移動平均線(21日線)を上抜け、さらに一目均衡表(日足)の「遅行線」が日々線を上抜ける強い展開となっていたことにも注目し、「より強気になるためには日足『雲』下限の抵抗を攻略し、少なくとも4月5日高値(=107.49円)の水準に再度トライするといった展開になってくることが必要」とも述べていました。

実際、下図に見るように4月12日には日足「雲」下限の水準を終値で上抜け、それ以来執筆時までドル/円が日足「雲」下限を終値で下抜けたことはありません。また、先週20日には4月5日高値を終値で上抜ける展開となり、いよいよ「本格的なリバウンド局面に突入するのでは」といった期待も大いに盛り上がることとなりました。

今週に入ってからのドル/円は一層強気の展開となっており、すでに108円処、さらには89日移動平均線(89日線)までをも上抜ける状況となっています。さらに、4月24日には一目均衡表の日足「雲」上限に接近する場面もあり、晴れて日足「雲」を上抜けるのも「もはや時間の問題」となってきています。

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ひとたび日足「雲」上抜けとなれば、そこからは一定の上値余地が拡がることになると見られますが、すでに直近(3月23日)安値=104.64円からのリバウンドがかなり急になっていることもあり、市場では当面の上値の目安を110円処とする向きが少なくないようです。もちろん、一つには「110」などというキリのいい数字で示される水準が相場の心理的節目になりやすいということもあるでしょう。振り返ると、今年の1月半ば頃から2月初旬にかけて110円処が一つの節目として意識された時期もありました。

また、昨年11月高値から今年3月安値までの下げに対する半値(50%)戻しにあたる水準が109.70円あたりとなることや、足下で200日移動平均線(200日線)が110円台前半の水準まで降りてきているということも見逃せません。ちなみに、2016年12月高値=118.67円から今年3月安値までの下げに対する38.2%戻しの水準も109.95円と、110円近辺には様々な複数の節目が存在することは事実です。

さらに、ドル/円が2月下旬あたりから一種の「転換保ち合い」のフォーメーションを形成していたと考えれば、「そのネックラインと見られる水準(107.30-40円あたり)から3月23日安値までの値幅と同じ値幅をネックラインから上方にとった値(上図・青点線)」というのも110円台前半あたりの水準ということになります。

周知のとおり、今週は26-27日の日程で日銀金融政策決定会合が行われます。今回は3月20日に就任したばかりの若田部昌澄副総裁、雨宮正佳副総裁が初参加ということになるわけですが、ともに「リフレ派」と言われる2人だけにぞれぞれの発言などが市場で注目される可能性もないではないと思われます。大型連休前ながら、場合によってはドル/円が一気に110円処を一旦試す可能性もあるものと見ておきたいところです。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役