ちょうど1週間前の11月15日、ドル/円は21日線をクリアに下抜ける格好となり、長めの陰線を描くこととなりました。前回の本欄でも触れたように、それは株価との関わりも大きかったと考えられ、実際に15日の日経平均株価は前日終値比で351円安と、かなり大幅な下げを演じています。

翌16日の日経平均株価は一時2万1,972円まで値を沈める場面がありましたが、それは前回の本欄で想定した一つの当面の下値の目安である「9月8日安値から直近高値までの上昇に対する38.2%押し=2万1,800円処」に相当するものであったと思われます。同時に、この日の日経平均株価の安値は心理的節目の一つであり、なおかつ25日移動平均線(25日線)が位置していた2万2,000円処を一時下回ることとなったため、当面の値ごろ感から急激に買い戻される展開となりました。

その後、日経平均株価は2万2,500円あたりまで値を戻したものの、17日の東京時間入り後に米大統領のロシア疑惑に関わる新たなニュースが飛び込んできて、ドル/円の方は一時的にも112円を下回る水準まで下落する場面がありました。さらに、週明け20日のドル/円も一時111.88円まで値を下げることとなり、2営業日連続して112円割れの水準を試したことで、むしろ111円台半ばから後半の水準には比較的強めの下値サポートが機能していることを認識させられることとなった模様です。

下図でも確認できるように、112円前後の水準には上から一目均衡表の日足「雲」上限(現在112.02円)、200日移動平均線(200日線/現在111.75円)、89日移動平均線(89日線/現在111.54円)などといった複数の節目が集中しており、これらが当面の下値サポートとして意識される可能性はやはり高いものと思われます。

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まして、それら複数の節目の近くには9月8日安値から直近(11月6日)高値までの上げに対する38.2%押しの水準=111.91円も位置しています。ちなみに、目下のところ日足の「遅行線」は26日前の日々線が位置するところを下抜けるかどうかの瀬戸際というところにあります。つまり、大よそ1ヶ月前に位置していた水準に近づいたということであり、それは売り圧力がそろそろ弱まる一因になり得るということでもあると思われます。

このように、当面のドル/円の下値は結構堅いように思われますが、一方で一段の上値を積極的に買って行くことが少々躊躇われることも事実です。周知のとおり、いまだ米税制改革の行方は不透明なままで、上下両院の法案を擦り合わせて最終的な落とし処を見出すのは早くとも年明け以降ということになりそうです。また、北朝鮮やサウジアラビア、イランなどの地政学リスクも大いに気掛かりですし、すでに米12月利上げは織り込み済みとしても来年以降の米利上げペースを見通すには、もう少し材料が必要になると思われます。

現実的な見立てとして、当面のドル/円の上値に過大な期待を抱くことは少々難しいのかもしれません。ただ、大きな流れをつかんでおくという意味で、せめて今月(11月)の月足・終値が31カ月移動平均線(31カ月線/現在113.40円)よりも上方に位置することとなるかどうか、今のうちから気にかけておくことは必要でしょう。ちなみに、先月(10月)は今年に入って初めてドル/円の月足・終値が31カ月線を辛うじて上回ることとなりました。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役