サンプラザ中野だー!
デビッド・ヘルフゴットはピアニストだ。映画「シャイン」をご存知か?オーストラリア映画にして、第69回アカデミー賞主演男優賞受賞映画だ(アミューズ配給)。天才ピアニスト「デビッド・ヘルフゴット」の半生を描いている。そのデビッド・ヘルフゴットのピアノ演奏会に行ってきたぞー。

映画によると、彼は父との激しい確執の中で「精神の病」にかかってしまう。厳しくも過剰な愛情を注ぐ父。その愛情にこたえるべく、あるいは愛情から逃げ出すべく、繰り返す過酷な練習。コンクールでの成功と同時に崩壊してしまう。そして今も「精神の病」を抱えながら演奏活動を続ける彼。と書くと、ずいぶん重たい演奏会だったかのようである。しかし彼のパフォーマンスは他人を暗くしたりはしない。逆に明るくしてしまう。だから俺は元気をもらって帰ってきたぞ。

午後7時。錦糸町のすみだトリフォニーホールはファンで満員だ。客席の照明が落ちると、ほどなく彼が入ってきた。どよめく客たち。何故どよめいたかと言うと、彼がリズミカルに走って飛び出して来たからだ。舞台下手(向かって左)側から。これで上手(向かって右)側からも人が飛び出て来たとしたら、まさに元気な若手漫才コンビの登場シーンである。

飛び出してきた彼は、ニコニコしながら客席三方に愛想をふりまく。両手の親指を「イェーイ!」と突き立ててだ。そしてくるりと身を翻してピアノの前の椅子に腰掛ける。普通はそれから袖をまくったりするものだ。指をこすったりするものだ。しかしデビッド・ヘルフゴットは違った。座ったとたんに間を置くことなく鍵盤を叩いた。いきなり演奏を始めてしまったのだ。一連の動作が途切れる事がない。まさか朝起きた瞬間から途切れていないのか?

曲の合間も同様だ。休憩で舞台袖に戻るときも、アンコールで花束を受け取るときもリズミカルなままだった。にこやかなままだった。それが病気なのかもしれないが、観客としてはたいへん楽しまさせてもらった。ドラマがあって、人生があった。そして会場は何ともいえない愛にあふれた。幸せなコンサートだった。

時代のせいか、教育のせいか。尋常でない行動を起こす人が増えている。もしも「精神の病」なのだとしたら、その闇の果てにこんな「明るさ」があることを祈る。

ところでマネックスの皆様・株主の皆様、黒字化おめでとうございます。
サンプラザ中野:数々の爆発的ヒット曲を生み出してきた「爆風スランプ」で活躍。現在新たに「サンプラザ中野とノンスモーカース」を結成。
自身のホームページでも意外な側面を見ることができる。
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