先日、あるテレビ番組で知って驚いたのは、讃岐うどん店チェーン「丸亀製麺」の売上No. 1の店舗は「ハワイ・ワイキキ店」であるということ。日本全国の780店舗をおさえ、オープン以来4年連続で世界1位というのだ。番組の中で、様々な国からの客が「おいしい!」と絶賛していた。うどんの評判がいいのはもちろんであるが、サイドメニューのてんぷらやおむすびだけを食べに来る人も少なくないとのことだった。おいしい日本食を好きなだけ食べられるというコンセプトが人気を集めているようだ。

これを見て感じたのは、日本の食や食材には、世界に打って出る潜在力が大きいということ。日本は製造業の分野ではすでに深いレベルまで海外進出を行っているが、今後は食や食材についても、グローバルな事業展開による更なる海外需要の取り込みが期待できるのではないだろうか。少子化が進むわが国では、国内の食市場の大きな伸びは期待できないが、海外では途上国を中心に生活水準が向上し、市場はまだまだ拡大していく。農林水産省によると、世界の食市場(加工+外食)は、2009年の340兆円から2020年には680兆円に倍増する見込み。日本の食が勝負できる、大きな商機である。

日本の食に対する人気は、海外で着実に高まっている。2013年12月、和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、日本人の伝統的な食文化が世界の注目を集めた。日本貿易振興機構(ジェトロ)が海外6都市(モスクワ・ホーチミン・ジャカルタ・バンコク・サンパウロ・ドバイ)で実施した食に関するアンケート調査でも、好きな外国料理の1位は日本料理との結果が出ている(図1)。こうした中で日本食の海外進出に対する支援策も強化されており、官民ファンドとして設立された海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)がラーメン店「一風堂」の海外展開に資金支援するといった動きも出ている。

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日本の食材のポテンシャルも大きい。日本には「神戸ビーフ」「八丁味噌」「夕張メロン」など、高い品質の地域特産品が多数あり、何れも世界に誇れるものである。これらのブランド化を進め、差別化するため、地域のブランド産品を地域共有の財産として保護する「地理的表示保護制度」が2015年6月にスタートした。政府は農林水産物・食品の輸出額を2020年に1兆円まで高める目標(2014年は6,100億円)を掲げており、本制度がこの後押しをするものと期待される。

このように日本の食の存在感は国内外で増しており、今こそ、その海外展開を加速させる好機である。訪日外国人数も過去最高を更新する勢いで伸びており、今後も海外での日本食に対する認知度が高まっていくことが予想される。日本の食の魅力を引き続き世界に発信していき、食の関連産業が波状的に海外展開していくという大きな流れを官民あげてより確かなものにしていく努力が求められよう。

コラム執筆:金子 哲哉/丸紅株式会社 丸紅経済研究所

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