サブサハラ・アフリカが成長する源泉の一つは、何と言っても人口の増加である。国連の人口推移予測(中位推計)では2014年のサブサハラ・アフリカの人口は約9.2億人であり、2033年に中国、2035年にインドを上回り、2050年には20億人を超えると予測されている。【図表1】(注1)
この人口増加を見越してアフリカが「拡大する消費財マーケット」として注目を浴びている中、人口増加と同時に「都市化」が進展していく事実にも注目しておく必要があるだろう。
2014年に国連が発表した"World Urbanization Prospects"によると、サブサハラ・アフリカの都市人口は2010年から2050年にかけて年平均3.4%増加していくと見られており、世界平均の1.4%の増加を大幅に上回り、アジアと並んで世界で最も都市化が加速する地域とされている。(注2)
2010年及び2050年のサブサハラ・アフリカ、その他の国・地域の都市化率は【図表2】の通りとなっている。都市化率は2050年時点で先進国を下回るものの、2010年からの上昇度合いは高く、人口増加と共に急速に都市に人口が集中していくことが見込まれている。
都市への人口集中に伴い、大規模都市の数も増加傾向にある。【図表3】はサブサハラ・アフリカにおける都市数の推移を規模別に示したものである。サブサハラ・アフリカにおいて、人口1000万人を超える「メガシティ」は、2014年時点でラゴス(ナイジェリア)、キンシャサ(コンゴ共和国)の2都市のみであるが、2030年にはこの2都市に加え、ヨハネスブルグ(南アフリカ共和国)、ルアンダ(アンゴラ)、ダルエスサラーム(タンザニア)が仲間入りするとみられている。
加えて注目すべきは、中規模都市の増加であろう。2010年から2030年にかけて、50万人以上-100万人未満の都市が43個から99個、100万人以上-500万人未満の都市は35個から67個に増加すると見込まれている。つまり、人口規模で見ると、日本の政令指定都市レベル(人口50万以上)の都市が約90個も新たに誕生する事になる。(注3)
都市化が進展する背景には、生産の効率化を目指して産業が集積することが挙げられる。産業が集まると、雇用が生まれ、それに伴い人口が集中し、付随して生活インフラ、サービス産業が発展していく。すなわち、産業の集積により教育、医療、その他の社会サービスへのアクセスが可能になるため、豊かな生活環境を目指して更に人口集中が加速するという循環が生じる。アフリカ大陸は、中国、アメリカ合衆国、インドが全て収まる以上の面積を持っており、この広大なエリアにおいて、インフラ、教育、医療をあまねく整備する事は非常に難しいため、豊かな環境へのアクセスを求めて、他の国・地域以上に都市化が進行していく可能性がある。
同時に都市化は様々な歪みももたらす。過度に人口が集中する事で、住宅、学校、病院、上下水道など都市インフラの不足が生じる。電力不足は都市化の進展を待つまでも無くサブサハラ諸国で既に最大の課題の一つとなっているが、そもそも電力が不足している状況下で電力へのアクセスを求めて都市に人口が流入した場合、更に状況が悪化するのは想像に難くない。交通についても、交通インフラ(含む信号)が不十分な中で所得の上昇に伴って自動車保有台数が増えており、都市部における渋滞のひどさはアフリカ大都市(ラゴス、ルアンダ、ナイロビ等)の名物ともなっている。
このような都市化に伴う課題は、当然、ビジネスのチャンスでもある。サブサハラ・アフリカ各国の政府は、電力、交通インフラ、病院、水処理などの分野への投資を積極的に誘致しており、諸外国企業が案件を精査している状況である。さらに、無計画な人口集中に伴う持続不可能な生産・消費によって引き起こされた環境問題も、取り組みが必要な課題として注目を浴びつつある。高い成長が続くサブサハラ・アフリカは、「拡大する消費財マーケット」としてだけでなく、人口増加と都市化が進む中で「拡大に伴い課題を抱える大都市」といった切り口で捉えていくことも必要な段階に差し掛かっていると言えるだろう。
(注1) 国連の人口統計ではアルジェリア、エジプト、リビア、モロッコ、スーダン、チュニジア、西サハラを除くアフリカ大陸の諸国をサブサハラ・アフリカと定義。
(注2) "World Urbanization Prospects"は各国の国勢調査を基に作成されている。ただし、都市化、都市人口の定義は各国によって異なっている点には留意が必要。
http://esa.un.org/unpd/wup/ (注3) 日本には現在、政令指定都市が20都市存在。
コラム執筆:常峰 健司/丸紅株式会社 丸紅経済研究所
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