中国では、毎年3月に開催される全国人民代表大会(国会に相当)で、一年の政策目標や施政方針、政府予算などが審議・採択される。2015年の経済指標の多くが下方修正されたのが、今年の大きな特徴である。経済成長率(GDP)は7.5%から7%に下方修正されたほか、貿易、消費、投資の三大成長エンジンのいずれもが前年比伸び率では1.5~2.5ポイント引き下げられた(図表1)。

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持続可能な成長への回帰と構造改革の加速を図る「新常態(ニューノーマル)」を定着させようとする姿勢がより鮮明に示された。改革開放の加速は、2015年政府活動方針の大半を占め、主に次の3つの分野が注目されている。

第1に、深水域と呼ばれる難関改革の加速である。政府統制を大幅に緩和するのが、今後の大きな方向性である。たとえば、許認可の簡素化、投資審査範囲の大幅縮小、薬品や公共サービス価格統制の緩和、国有企業の改革加速、公共事業投資におけるPPP(官民連携)モデルの導入、民間資本の導入を目指す鉄道投融資改革、民間銀行の設立奨励などが期待される。

第2に、対外開放の加速である。外商投資産業指導目録を4年ぶりに大幅に修正し、外資による投資を規制する業種の数を半分程度に削減した。さらに、上海、天津、広東、福建という4箇所のFTZ(自由貿易区)を中心により高度な対外開放を目指すネガティブリスト(例外的な外資投資禁止分野)形式による外資導入を普及させる計画がある。従来外資の投資が一部制限されていた金融、保険、教育、医療、介護、養老施設、会計監査、電子商取引などで大幅に規制が緩和される見込みである。

第3に、海外進出の加速である。海外インフラ建設への参加や、冶金、建材などの産業の対外投資を奨励すると同時に、鉄道、電力、通信、工作機械、自動車、飛行機、電子などの中国製品の対外輸出を促進する。
海外インフラの点では、中国政府が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)や、民間のシルクロード基金という資金力をバッグに、一帯一路(ワンベルトワンロード:シルクロード経済ベルト・21世紀海上シルクロード)の建設を目指している。鉄道やパイプライン、通信、金融などを通じて中国と欧亜地域を連結させ関係強化を促進する。たとえば、鉄道を欧州や中東、アジアまでに拡充し、資源エネルギーや消費市場へのアクセスに加え、鉄鋼などの過剰生産能力の解消、人民元の国際化と、一石三鳥の役割がある(図表2)。

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いわゆる中国版のインフラ輸出においては、高速鉄道車両や工作機械などの完成品で日本企業と競合する場面が増えるであろうが、コア部材やシステムなどでは日本企業にも商機をもたらす側面があろう。また、製造業の競争力強化を図る「中国製造2025」の下では、次世代通信技術、省エネ・新エネ車、農業機械、軌道交通、電力などを重要分野に、製造業のスマート化、ネットワーク化、デジタル化が必要とされており、日本企業にとって得意分野を発揮する機会が広がりそうだ。

コラム執筆:李 雪連/丸紅株式会社 丸紅経済研究所

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