近年のアフリカの成長を語る上では「豊富な天然資源」、「爆発的に増加する人口(労働力)」、「中間層の拡大による市場としての魅力」、「農業・インフラ等の未開発の投資機会」など、様々なキーワードが存在します。2000年代以降、サブサハラアフリカエリアは年平均5%以上の成長を成し遂げ、2014年-19年の5年間も、年平均5.5%の成長が見込まれています。しかし、その成長の源泉を見極めるのは難しく、上述のような要素が折り重なって高成長が続いていると考えるのが妥当でしょう。
一方で、国によっては前年比二ケタ以上の爆発的な成長が予測されているところもあります。その鍵を握るのは「資源」と言えるのではないでしょうか。
【図表1】はIMF経済成長率見通し(World Economic Outlook 2014年4月)における、サブサハラ45か国の成長率見通し上位5か国(~2019年まで)です。これによると、14.3%(ニジェール:2016年)、17.6%(ギニア:2019年)といった数字が目を引きます。これらの国における成長の前提には、ニジェールの場合、5000t/年の生産量が見込まれる、世界最大級のImourarenウラン鉱山の生産開始、ギニアの場合はアフリカ最大規模で世界最後の良品質な鉄鉱石を埋蔵する鉱山とも言われるSimandou地域での鉄鉱石の生産開始、が想定されていると考えられます。また、モザンビークでは、タンザニアとの国境付近にあるRovuma湾の沖合で世界最大規模の海底ガス田(推定埋蔵量100Tcf 超、日本の天然ガス消費量の20年分以上)が発見され、同じくIMFの推計で2020年に24.4%の成長が見込まれています【図表2】。
資源開発とGDP成長を見る際は、二つの段階(フェーズ)に分ける必要があります。まずは生産(輸出)が始まる前の開発段階です。この段階においては鉱山自体の開発に加え、輸出するための港湾や、産地から港湾まで輸送する鉄道等のインフラ等の周辺設備の開発・建設需要が発生します。この建設需要によって雇用拡大、所得の上昇、消費の拡大が期待され、投資、消費両方の側面からGDPが押し上げられます。ただし、資源開発に必要となる資本財の大半を輸入に頼ることが多いため、その成長率は一定程度相殺されます。
そして、成長率が爆発するのは資源の輸出が始まったフェーズです。輸出は生産とともに段階的に進められていきますが、輸出増加分は純粋にGDP成長にプラスに寄与します。上述の10%以上の成長が予想されるのは、総じて輸出が開始した段階であると考えられます。
このように、資源開発はその国の経済、そしてGDP成長率を大きく左右します。そのため、これらの数字を見る際は、経済規模が小さいアフリカ諸国の場合、見た目の成長率が大きく上振れしてしまうという点に注意が必要でしょう。名目GDPを見ると、モザンビーク:147億ドル、ニジェール:73億ドル、ギニア:65億ドル(参考:日本:4.9兆ドル。以上2013年。)であり、比較的小さな経済規模の国に開発資金が流入し輸出が急拡大すると、どうしても成長率は大きく上振れてしまいます。
また、成長率見通しは、あくまで開発計画が順調に進んだ場合の推計であるという点にも留意すべきでしょう。資源に限らずビジネスには往々にして不確実性がつきものですが、アフリカなどの新興国ではよりそのリスクが高いことは否定できません。上述のニジェールImourarenウラン鉱山は、区付近における政情不安に加え、市況の悪化により生産開始が遅れているという事実があります。また、ギニアSimandouの鉄鉱石開発は、政権交代後に民間鉱山会社らから鉱業権が剥奪されるなどの事態が生じました。(モザンビークのLNG開発は、当初より開発が遅れているとの見方もありますが、現状、2019年の生産開始と見られています。)
このような経済規模の問題やプロジェクトの不確実性という課題はあるものの、手つかずの資源が眠るアフリカ諸国は、安定成長に移行しつつあるアジア諸国には見られない二ケタ成長の可能性を秘めています。何より、「開発開始後25年に渡って1400億ドル規模の経済効果(ギニアSimandou鉄鉱石)」、「総プロジェクトコストは400億ドル(モザンビークRovuma LNG)」といった専門家らの予測を見ると、先進国の経済規模からみると限定的であっても、一企業から見ると十分に巨大で魅力的です。
新興国での資源開発は国家の経済規模を凌駕する案件であることも多く、往々にして政府肝いりの国家的プロジェクトとして位置づけられています。一部の鉱山資源は市況の低迷が続いていますが、資源需要先である先進国や中国といった世界経済の動向を見据えつつ、高成長を続けるアフリカの勢いとそれを支える資源開発の進展に引き続き期待していきたいところです。
コラム執筆:常峰健司/丸紅株式会社 ヨハネスブルグ支店
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