中国の高度成長はいよいよ終焉へ
2012年の中国の実質GDP成長率は+7.8%と、2年連続で2桁成長割れとなりました。中国の高度成長は既に30年経っており、いよいよ終焉を迎えるとの認識が広がっています。
そして高度成長の終焉に関する背景として以下のことが指摘されています。
第1に、政府が2008年11月に打ち出した「4兆元の経済対策」は、中国経済をリーマンショックから真っ先に脱出させましたが、「過剰設備」、「不動産バブル」のリスクを表面化させてしまったということです。「不動産バブル」については、中国の都市人口比率は52%(約7億人)を上回ったばかりであり、バブルと言い切れないところがありますが、価格上昇と供給増加のペースは速すぎであり、何らかの調整は避けられないでしょう。
第2に、生産年齢人口の伸びが人口全体の伸びを上回り、子供・老親の扶養負担が低減し、経済成長が浮揚しやすくなる「人口ボーナス」のメリットが薄れてきたということです。2015年頃には生産年齢人口が減少に転じる見込みですので、昨今問題視されている労働力の確保は一段と深刻になっていきそうです。
第3に、生産性改善の余地など「後発国のメリット」が薄れてきたということです。対中直接投資の伸び悩み、企業のASEAN移転などはこうしたことの例といえます。
「都市化」に新たな活路
上記の状況に対して、昨年11月に誕生した習近平政権は、持続的な成長を図るべく、「都市化、農村近代化、情報化、工業化」を梃子に経済構造改革を進めると表明しています。
そして、その中で注目されているのは「都市化」です。大都市と地方都市を適切に整備することや、都市への出稼ぎ農民に対して都市住民並みの行政サービスを保障することによって、都市内及び都市と地方の格差を是正しつつ、内需を拡大しようというものです。
そうした「都市化」は成功するのでしょうか。特に、地方都市の開発には大きなリスクを伴うとの印象があります。しかし、中国の「地方」には、他の国の地方と比べて、いくつかの稀有な条件があり、ある程度うまくいくのではないかと考えられます。
稀有な条件の一つとしては、中国の「地方」は、実は地方とはえいない、絶対的に人口が多いということが挙げられます。例えば、中国で「辺境」と言われる4つの国境地域をみますと、人口75万人以上の都市が17あり、そのうち、ハルビン市(黒竜江省)と昆明市(雲南省)は300万人を超えています(図表)。
次に、2000年代に入って、上記の国境地域で貿易が活発になっており、絶対的に人口の多い中国の地方都市が貿易の中心地を担うようになっているということが挙げられます。例えば、ウルムチ市(新疆ウイグル自治区)は、中央アジアに対する繊維品、自動車、建機等の輸出拠点になっており、外資を含む企業進出が活発になってきています。
さらに、中国の「地方」は、石油、石炭、天然ガス、鉄鉱石、金、レアメタルなどの世界的な生産地でもあるということが挙げられます。例えば、内蒙古自治区では、カシミヤの産地である鄂尔多斯(オルドス)市で、数年来の不動産バブルが破裂し、大きな問題として報じられています。ただし、自治区全体では、鉱業を中心に経済成長率は2桁成長が続き、不動産価格も区都呼和浩特市(フフホト)を中心に依然として上昇しています。
このような、絶対的に多い人口、隣国との貿易の容易さ、豊富な資源は、規模のメリットや国際化のメリットをもたらしやすく、都市化の推進に有利に働くと考えられます。人口ボーナスや後発国のメリットが薄れるとしても、こうしたメリットにより、経済が大きく停滞するリスクは小さいと思われます。
コラム執筆:鈴木 貴元/丸紅株式会社 丸紅経済研究所
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