2011年3月の民主化政権の誕生により、ミャンマーはアジア最後のフロンティアとして、世界の注目を浴びる様になった。豊富な天然資源、肥沃な国土、安価な労働力、中・印・ASEANに挟まれた戦略的な立地等、同国の潜在力については第20回のコラムで取り上げた通りである。
2年経った今、ミャンマーへの関心は続いている。分かりやすい例が、ミャンマーへの来訪者数の急増である。とくに、2011年12月のクリントン米・国務長官の訪問以降をきっかけに変化が現れ、2012年4~11月は観光・商用を合わせて既に43万人が入国し、入国者数は前年同期比で57%増加した。当然ながら、様々な分野の企業がビジネスチャンスを求め、ミャンマーに足を運んでいるとみられる。
(図1) 外国人入国者数の推移
こうした動きが投資の本格的な流入につながるのは、2015年頃というのが一般的な見方だ。実際、2011年度までの直接投資の動きをみると、累計受け入れ額407億ドルの大半が電力及び石油・ガスのエネルギー分野における投資であり、幅広い業種への広がりは見られない。
投資の拡大には、解決しなければならない問題がいくつか存在する。まず挙げられるのは、脆弱なインフラの改善である。とくに、電力不足は深刻であり、夏場に停電が頻発する状況は改善されていない。さらに、今後は通信、交通、物流インフラの整備にも取り組まなければならない。現状では、事業環境には困難が多く、コストがかさむ結果になりかねない。
第二は、土地の確保である。そもそも工業団地に空きがなく、オフィスや住居の供給も不足しているため、ヤンゴン市内の賃料は高騰している。だからこそ、2015年に開業が予定されるヤンゴン郊外のティラワ経済特別地区への期待が大きい。
第三は、法制面の整備である。特に注目されるのが2012年11月に成立した新外国投資法である。近々、その細則が発表され、出資比率や優遇策等、外国企業にとっての投資条件がより明確になることが期待されている。
課題は山積みに見えるが、2012年に入り、製造業の投資が増え始めている。1件当たりの金額こそ小さいものの、件数は2011年度の5件から2012年4~11月は既に36件に達している点は注目に値する。新興市場ならではのリスクは存在するものの、事業機会を見つけ、早い段階で投資を決断している企業は着実に増えているのである。国際社会との延滞債務問題も解消されたことで新たな資金の流入が期待される中、成長が本格化するタイミングは2015年より早まる可能性も十分にある。
(図2) 直接投資の推移
コラム執筆:井上祐介/丸紅株式会社 丸紅経済研究所
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