「終わり良ければ全てよし」ということで、このまま今年は良い雰囲気で終わりそうなのですが、年初の急落が記憶の彼方になり過ぎてもいけません。今年を振り返れば、年初から中国の上海総合指数が急落し、世界の金融市場がリスクオフを強めた年明けでした。中国本土市場で導入されたサーキットブレーカー制度が導入初日の1月4日に続き、7日にも発動するといったような波乱の幕開け。流動性リスクを警戒した投資家の売りでかえって相場の下げが加速し、サーキットブレーカー制度はわずか4日間で運用停止に追い込まれました。
上海総合指数は昨年末から1月28日の年初来安値まで25.0%も下落。中国株の急落をきっかけに世界的に景気減速懸念が強まったことで、米国株も例外ではありませんでした。ダウ平均は安値をつけた2月11日時点の年初来下落率が10.1%安となりました。その後は原油相場の上昇などをきっかけに反発し、ダウ平均が昨年末水準を回復したのは3月中旬でした。独DAX指数は9月、日経平均は年末までかかりました。
一方、年初波乱のきっかけを作った上海総合指数は、昨年末の水準を回復できない状態で年を終えようとしています。しかも、世界的な株高の流れに反した動きになっている。

前回、少し不安だと指摘しました上海総合指数の警戒警報が一段と強くなりました。チャートをみると、年初の急落後、真空地帯をゆっくり戻ってきていますが、過去のネックラインといわれる水準近くまで戻りきった可能性が高いということです。しかも、直近高値を付けたあとの下げ幅も大きい。かろうじて、2月安値から形成されるサポートライン上は一時的に維持するでしょうが、戻しても不安定な状況は続くでしょう。
実は、中長期のトレンドを示す新値10本足をみると、4月~5月の下落時以来の陰転となりました。なので、すでに下を向き始めているということです。年明けに向けて嫌なムードが残るかたちになりそうです。

もう一点心配なのは、逆に昨年末から最も上昇したダウ平均とドルインデックスがリンクして上昇してきている点です。図表をみていただくと、中国ショック直後の株価の戻り、ブレグジット後の株価の戻り直後は、いずれも強いドル資産を求めて米国に資金が流入しました。しかし、それが一巡した後、両者は逆方向に動く傾向があることがわかります。ということは、トランプラリーもドル上昇によってまもなく株価が調整に入るか、ドル下落によって株価の高値が保たれるか。その分岐点はいつになるでしょうか?

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東野幸利
株式会社DZHフィナンシャルリサーチ

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