イギリスの代表的な株価指数であるFT100指数は、「Brexit」前の水準を早々に回復しました。年初来でもプラス圏に回復ということですから、「Brexit」による混乱はほぼ吸収したかたちとなりました。ただ、ドイツのDAX指数やフランスのCAC40指数に関しては同じタイミングで戻りはしたものの、年初来ではまだマイナス圏です。スペインやイタリアの株価指数に関しては、今年一番低かった安値を割り込むダメージを受ける結果となりました。チャート的にバランスの崩れが大きいのは、特にイタリアの株価指数です。
世界的に共通していますが、金融機関の株価の下げが指数と市場心理に悪影響を与えています。不良債権が相対的に多いイタリアの銀行をはじめ、ドイツやフランスの大手金融機関の株価が軒並み2月の水準を下回ってきました。今の欧州は不良債権問題が根っこにあり、英国国民投票は気づきになっただけ、といえるほど、今年後半の最大級のリスクにのし上がってきている印象です。

一方、この直近の動きが当面の方向を決めるとしたら、イギリスの株価が強いのは離脱がポジティブに作用する、という理解をしてもよい?ということになります。昨年は米国の次に利上げがあるといわれていた時期もあるぐらい、英国の景気は悪くはありません。
もし、米国株が高値を更新するのであれば、欧州の中では英国株だけがそれなりに追随できる準備ができたという見方もできるわけです。中国を含めた資源国市場にも若干資金が戻り、ユーロ圏の株式市場だけさえない、といった状況がしばらく続くのでしょう。

ただ、その米国株も正念場です。以下の図表に示したのは、ダウ平均とダウ輸送株指数(以下、輸送株)の週足チャートです。両者は連動性が強く、景気に敏感な輸送株はダウ平均よりも先行して動くことが多い。実は、2015年からは動きが異なっています。輸送株は2014年12月に史上最高値をつけました。ダウ平均の方は史上最高値に近い水準を現在でも維持していますが、輸送株は調整が続いており、高値から19%下の水準(7/5現在)で低迷しています。その結果、52週線をベースにみると、ダウ平均は52週線の上方で推移している一方、輸送株は下落トレンドにある52週線の下方で推移しています。真逆の位置にあるわけです。つまり、強いダウ平均と弱い輸送株のどちらにサヤ寄せしていくかです。

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筆者は、近いうちにダウ平均は史上最高値を更新するものの、思った以上に伸びない。それは、輸送株がいま下げているため、ダウ平均の動きに急にはついていけず、結果的に輸送株の上値重さに引きずられるためだと思っています。ただ、日柄調整が済み、輸送株が上昇できるタイミングになってきたところで、両者同時的に騰勢を強めていくシナリオを描くことはできそうです。
ですので、欧米金融リスクは当面くすぶり続けるでしょうし、米利上げの行方、円高、企業業績の下方修正などが、許せる範囲で織り込めるまでは、今年もやっぱり「夏枯れニッポン」なのでしょうか・・・。

東野 幸利
株式会社DZHフィナンシャルリサーチ

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