「英国の国民投票」が行われる前、第417回のこのコラムで 「残留・離脱」どちらでも株高になるのでは、と言及しましたが、結果はご存知の通り。残念ながら外れてしまいました。どちらに転んでも、上がると思っていました。筆者は強い米国株を頼りに、英国の国民投票後には「超」楽観シナリオを描いていました。しかし、明らかに相場は逆方向に向いています。

まず、あんなに強かったはずの米国株がもろくも崩れかかっています。しかも、欧州株が金融株を中心に弱く下げていること、相場の反転のきっかけとなるような、具体的な金融安定化策などの発表がなく、世界の投資家は気迷いながらも、リスク資産を手放す動きを続けています。しかも中国も、2008年の「米国発」の金融危機(=リーマンショック)時に実施した大規模な景気対策(=後のバブルを招いた)を実施する余裕は、もはやないようです。

「ブリグジット」(英国のEU離脱)をきっかけとした相場の過剰反応は短期的には落ち着くと考えていますが、本質的な懸念は以前からいわれている「欧州発」の金融危機の発生です。それゆえ、欧州の景気減速感やEU全体の政治的リスクが強く台頭した際には、日本株を含め世界の株式市場が再び混乱する余地を残しています。

今回の下落によって、日経平均株価のPER(株価収益率)は6月28日現在で12.7倍程度、PBR(株価純資産倍率)は1.04倍程度、予想配当利回りは1.98%程度と、バリュエーション(指標から見た割安度)の面からは、割安な水準まできました。しかし、もしこの先、企業業績の下方修正があるとすれば、瞬間的に「今みえている割安感」は「嘘」になってしまいます。逆にいえば、円高などの影響があっても、それが思ったよりも企業業績に影響が出ないとなれば、株価はいずれ上昇するでしょう。

では、どちらのトレンドになるでしょうか。それは、しばらくマーケットの落ち着きを待つしかありません。ただ、お金をたくさん持っている企業はそう簡単に配当金を減額することはないでしょうから、インカムゲイン(投資に対しての配当)の見返りが十分にある株式には、以前よりも魅力が高まったことは確かではないでしょうか。

実際、これからの銘柄選びのヒントになる事象もみられました。6月24日は朝方相場が上昇した後、残留・離脱報道に一喜一憂するかたちで次第に下げ幅を大きくしたわけですが、終わってみれば、東証1部の主力株のほとんどがローソク足では「大陰線(=強い弱気のサイン)」でした。
しかし、週明けの27日も欧米株が下げた影響を受けると思いきや、先行して下げていた日本株には、買い戻しが入りました。そこでびっくりしたことは、24日の「大陰線」の高値を上回る銘柄が意外と多く、その中には、値動きが重い主力株も含まれていたことです。

筆者はこの現象を、よく「大逆転の陰線逆上がり(強気転換)」といっていますが、前日の下げを帳消しにする動きは強いという意味で、これから別物扱いできる銘柄選定候補となりえます。
東証1部上場銘柄(優先株を除く)1,963銘柄のうち、27日の値が24日の高値を上回ったのは、実に136銘柄もあります。そのうち業種でみると、小売業「30」、サービス業「17」、卸売業「13」、情報通信「10」、建設業の「9」が特に多く、これらで大半を占めていました。いわゆる内需系の銘柄です。いくら円高警戒で内需シフトといっても、全体的にリスク回避になっている状態で、大混乱のあった24日高値を翌日早々に上回るなんて、特別な手が買っていないとまずありえない、と感じる動きなのです。ここは自動車株を中心に下げた輸出関連株を値ごろ感で買いたくなるものですが、実際、持つべきものは暴落相場で耐えた銘柄かもしれません。

該当する銘柄を全てご紹介はできませんが、24日高値から27日高値までの上昇率が高い、主なものだけを紹介すると、ジェイアイエヌ(3046)、ホギメディカル(3593)、イエローハット(9882)、山崎製パン(2212)、ツムラ(4540)、西松建設(1820)、セントラル警備保障(9740)、タカラトミー(7867)、NTT(9432)、タクマ(6013)、京王電鉄(9008)、前田建設工業(1824) などが挙げられます。

東野 幸利
株式会社DZHフィナンシャルリサーチ

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