日経平均が終値ベースで1月25日高値(17,110円)を上回り、ひとまず下方へのリスクが和らぎました。メガバンク株の戻りの鈍さをみると、再び底割れがあるような気にもなりますが、そういう「疑心暗鬼」のときこそが底入れ(悲観の中で生まれる)になるものです。
産油国を中心とした政府系ファンド(SWF)による日本株売りがクローズアップされています。ただ、相場が下げているときは売り手の実体は不明ですが、そういう話が市場に出回るころには売りはほぼ終えているケースが少なくありません。メガバンク株も換金売りの対象になっていた、に違いありません。メガバンク株だけではなく主力株も総じてそうですが、配当利回りの高さをここまで無視して売り叩くのは、ポジション調整に迫られた換金売りとしか考えられません。

一方、輸出関連株の弱さは米国を中心とした海外景気の急減速を織り込む動きです。そういった意味でも、来週発表の米1月雇用統計が重要ですが、今回は米1月ISM製造業景況指数の方がより重要のような気がします。というのも、12月まで2カ月連続で景気判断の分かれ目となる50を下回ったからです。3カ月連続となると景気減速感がより表面化し、マーケットの混乱を深めることになりかねません。やっぱり景気は悪かったのか、12月の利上げは何だったんだ!といった具合です。でも、逆に3カ月ぶりに50以上を回復するとなると、輸出関連株は買い戻されるでしょう。

さて、明日は日銀金融政策決定会合の結果、黒田日銀総裁の会見があります。中国経済の不透明感や円高進行、東京市場の年明けからの歴史的な急落で「黒田バズーカ第3弾」に期待する向きは多い。12月の日銀金融政策決定会合では「異次元緩和」の補完措置として、設備や人材投資に積極的に取り組む企業の株式を対象にした上場投資信託(ETF)を買い入れる枠を3,000億円設定しました。政府の成長戦略に対して企業の前向きな行動を後押しするはずだったのですが、それに水を差したのが急激な円高です。 
 
2015年度の大企業製造業の想定為替レートは1ドル=119.40円(日銀短観ベース、2015年度下期は118.00円)。実勢レートはそれ以上に円高が進んでおり、企業業績の下振れリスクが高まっているのが株価下落の主な理由です。今回の金融政策決定会合では、地方債などの買い入れ枠の設定やETFの買い入れ枠の拡大、付利の引き下げなどの追加緩和を実施するのではないか、といわれています。期待外れに終わると市場には逆効果になるかもしれませんが、筆者はそこまで大胆な緩和策は今回ないと思います(ドル円相場が1ドル=115円以上に円高が進んでいなければ)。でも、長い目でみれば緩和見送りの方が真の底入れを確認するいい機会です。緩和見送りや期待外れで売られても、底割れしなければ売り方は必死になって買い戻しを急ぐでしょう。ほんとの底値が確認できたという意味で・・・

この歴史的な下落相場の中で、株価のバリエーション面での割安感が強くなっているとすれば、市場が落ち着けば水準訂正で株価は上昇します。
図表は、株価を1株当りの利益で割って求めるPER(株価収益率)のボリンジャーバンドです。ボリンジャーバンドは一般的に株価の上げ下げの異常値測定に使われる標準偏差で示されたテクニカル分析手法で、バンド内(+2シグマと-2シグマのレンジ)に価格推移の95%程度が収まるという見方をします。株価ならバンドの上限に達すると反落、下限に近くなると反発を示唆します。ただ、ここでは株価の代わりにPERの20日間の平均値を基に異常値を判断します。つまり、上限にくるとPERが割高で低下する局面に近い、足元のように下限付近まで低下すると割安となり上昇に転じる可能性が高いと判断できます。

米国のS&P500社ベースのPERは、昨年11月6日の17.8倍から1月21日には15.3倍まで低下。TOPIX(東証株価指数)は11月20日の15.5倍から1月26日現在で13.4倍まで低下しています。両者PERとも2014年以降では、株価と同じように下限付近から上昇する傾向にある。PERが上昇するのは株価が上昇するか、1株当りの利益が低下する(業績悪化)かのどちらかです。
本格的に国内企業の決算発表が始まりました。主力企業の決算発表で先陣を切った安川電機(6506)の通期連結営業利益の下方修正に対しても、三井住友FG(8316)の決算に対する反応も決して悪くありません。全体的によほど悪い内容でない限りは、見直し買いが相場を支えるような気がします。株価上昇によってPERの水準訂正(反発)は起きうるのでしょうか。

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東野幸利
株式会社DZHフィナンシャルリサーチ

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