発表される国内企業決算(主に3月本決算企業の第2四半期)への反応は短期売買によって振れ幅が大きくなっているものの、内容的には通期下方修正への懸念は幾分和らいでおり、12月に向けては好業績株に実需買いが入りだす公算が大きい。
一方、米国株には高値警戒感が強く、経済指標の結果次第では足元までの上昇を調整するきっかけになるかもしれません。10月に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)の声明によって、市場では12月の米利上げ観測が再び強まるかたちとなりました。しかし、労働市場についての表現は下方修正されました。雇用者数は今年の9月までは月平均で20万人程度は増えていますが、昨年の同じ時期に比べると足元の雇用情勢は明らかに鈍化しています。それだけに11月6日発表の米10月雇用統計はいつも以上に注目です。雇用者数の伸びが事前の市場予想を若干上回る程度、あるいは若干下回る程度ぐらいなら株価にとってフレンドリーですが、予想から大きくかい離する結果になってしまうと、市場がどう判断すればよいかわからず、大幅安の恐れがあるからです。特に、大幅に下回る(景気の鈍化)結果になってしまうと、株価にとってろくなことはありません。景気の鈍化を示す方が利上げ先送りで株高との見方もできますが、景気に勢いがあった方がやはり株価のモメンタムは強いはずなのです。

日銀金融政策決定会合では、金融政策の現状維持が決定されました。現状維持の結果を受けて、10月30日後場の日経平均株価は下げ幅を拡大する場面もありましたが、売り一巡後は急速に切り返す展開となりました。FOMCでタカ派的(金利引き上げに対して積極的)なムードが形成されたあとだっただけに、日銀による追加緩和が温存されたことで、ドル高・円安に対する期待感が維持された? 温存されたというよりも、市場にサプライズを与えることが期待できなかったため、物価目標の達成時期を先送りしながらも、追加緩和を実施しなかったといった印象を持っています。

日経平均株価は25日移動平均線(18311円、11月4日現在)を上回ったあとも順調に下値を切り上げ、当コラムの第385回 「18800円を超えれば何が変わる?」でお話させていただいた9月9日高値(18770円)を上回りました。一目均衡表では雲上限が上値で意識されており、上抜けることができるならば2万円のフシはみえてくるでしょう。
一方、東証1部の騰落レシオ(25日)が125.75%(11月4日現在)と過熱感を示してきたことから、短期的には調整が入ってもおかしくありません。郵政3社の上場直後は底堅さを維持できるかもしれませんが、米雇用統計発表後の来週前半あたりから下落転換する可能性は十分あると思います。東証が発表する空売り比率も31.4%(11月4日現在)と直近ピーク(43.4%)比で大幅に低下し、空売りの買い戻しが目先は一巡した可能性も高いです。
1949年以降、年間12カ月のうち12月と1月は月間で陽線を形成する確率が比較的高いことがわかります。現在、本格化している第2四半期決算の底堅い業績に対する株高効果は、8月のチャイナショックで売られた分を修正する動きにとどまりそうですが、目先的な調整が一巡した後は11月第4週あたりから再び持ち直すのではないでしょうか。11月は今後の方向性を見極め、投資タイミングとしては最も重要な時期になるでしょう。

東野幸利
株式会社DZHフィナンシャルリサーチ

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