24日の日経平均株価は前週末比で895円安と、今年最大の下げ幅を記録しました。それでも「セリングクライマックス」(総弱気となり大量の売り注文が市場に出て、相場があく抜けする)ではありませんでした。続く25日は18000円割れ。取引時間中に安値から約1000円上げてから約1000円下げるなど、乱気流に巻き込まれ制御不能状態になってしまいました。24日のダウ平均は一時約1000ドルも下落。中国の利下げを好感して大幅高で始まった25日のダウ平均も前日比204ドル安とほぼ安値引けとなりました。
「上げ100日、下げ3日」という相場格言もありますが、6月24日につけた年初来高値20952円が目前だった8月上旬からの急落劇は、まさにその通りの展開といえます。これで、筆者が当面強いサポート水準になると信じていた7月9日の安値19115円を下回り、短期的なチャートは崩れてしまいました。
残念ながら「国内企業の業績が良い」とか、「相対的に日本株は底堅い」とか、もはや言っている場合ではなくなりました。商品市況の下落や中国株を始めとした世界主要国の株価が下げ止まらないと、海外からの「日本株はずし」はしばらく続きそうです。グローバルで運用している海外投資家のご機嫌次第でいくらでも売りが出てくる環境です。世界で最も時価総額が大きい米アップル株の動きも、大口投資家の行動を左右する重要なファクターです。
とはいえ、18日の高値20663円を起点に「三空」という、チャート上では3つの空間を下落過程で形成しました。江戸時代の米相場で活躍した本間宗久が見出したとされる酒田五法では「三空叩き込みには買い向かえ!」といわれるほど、買い場となる可能性が高い。26日の日経平均の反発を見る限りでは、目先は戻る力がどれだけあるかを試す局面か。7月9日や5月7日安値や両安値をつないだ上値抵抗線でいったん上値を抑えられる可能性は高いですが、再び8月26日に付けた安値(17,714円)を下回ると天井形成後の単なる揺り戻しとなりリスクが再び高まります。一方、一目均衡表では雲の下限付近ともなる2万円、つまり急落前のもみ合い相場の中心まで戻せれば、その反動で下げたとしても7月9日や5月7日安値付近が逆にサポートになり、早期持ち直しにつながる可能性が高まります。ただ、今回の急落は、これから長いもみ合い相場が続く暗示の意味合いが強いかもしれません。例えば、三角もち合いであれば最初に形成される最も大きい値幅となるようなイメージです。
「第374回 あの買いサインを忘れるな!」でお伝えしましたように、日経平均は2007年の高値(18300円)や2000年のITバブル当時に付けた高値(20833円)を上抜け、中長期の強気サインが点灯しました。
もし、8月、月足の12カ月移動平均線(18538円)を終値でキープできれば、これだけ短期間で破壊的な下げとなっても、テクニカル上では「長期における大切なフシは維持できた」ということで安心材料になります。逆に、12カ月移動平均線を割り込めば、今年の高値20952円から約20%安の水準である16800円前後までの覚悟が必要になります。この価格は24カ月移動平均線(16788円)の水準とほぼピタリ一致します。
世界的な連鎖安の原因は、中国の景気減速や商品市況の下落、ギリシャ政局への不透明感、韓国と北朝鮮の軍事的緊張の高まりなど、いろいろとあります。しかし、理由がわかる下げならば、この先は極端に恐れるべきではありません。
要は、今後の世界景気がどうなっていくかが最終的には重要です。景気が思ったほど落ち込んでいなければ、この下げは絶好の買い場になるでしょうし、景気が悪化し始めているのであれば、当面の調整は避けられないことになります。
というのも、米国で先週公表されたFOMC(公開市場委員会)議事録では、ややハト派(利上げ反対派)的な内容が確認されたにもかかわらず、20日の米国株が下げたことが、筆者には少し引っかかっています。つまり、米国の景気が思っているよりも強くなく、9月の利上げが先送りされるとの思惑が強まれば、これまでの流れだと株価は上昇していたに違いありません。しかし、結果はその逆でした。これは、米国の景気減速を織り込んでの下落だと感じました。
今回の世界株安の混乱で、9月の利上げはまだ早いとの見方が急浮上いていますが、市場関係者や投資家がボラティリティに慣れた今だからこそ、やりやすいのではないかと思います。これだけ中国発の景気減速懸念が台頭しているため、景気は堅調だから利上げをします、といった引き締めバイアスを市場関係者に織り込ませないといけないと思います。
利上げで瞬間的なショックはあるかもしれませんが、そのときが今の下げの二番底を形成するタイミングであると考えておくのも、よい戦略だと思います。
東野幸利
株式会社DZHフィナンシャルリサーチ
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