3月本決算企業の4-6月期の業績発表もスタートしました。業績内容を通じて、ギリシャ問題や中国株の乱高下によって影響を受け、実力以上に売られた銘柄のバリエーション調整が進むことが考えられます。そういった意味では、個別ベースの値動きが目立つ時期といえますが、業績発表の時期を終えたころから、円安に傾きだすことはよくあり、今回も発表が一巡する8月中旬ごろからの株高・円安が予想されます。

最近、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が発表した2015年3月末時点の運用資産では、全体の143.9兆円のうち、国内株は31.7兆円(全体の22.0%)であることが判明しました。25%まで引き上げることが決まっているため、あと3%程度は増加余地があることになります。

証券各社の分析によると、3月末から6月末までのTOPIXの上昇率(5.7%)を前提にした場合、6月末時点でのGPIFによる国内株式の新規買い余力は3兆円程度あると予想しています。ところが、7月第2週の投資主体別売買動向をみると、GPIFの売買動向が反映される信託銀行は国内株式を売り越していました。この週はギリシャ国民投票で緊縮財政案を否決する方向となったことが嫌気されたことや、中国株安に対する懸念も強まり、日経平均は一時1万9115円まで下落する場面があった週です。これまでのパターンですと、GPIFによる下値買いが入っていたはずなのですが、実際は違っていました。7月に入ってからは買い手としての動きはほとんどありません。

海外投資家は安保法案をめぐる安倍首相の支持率の低下や、上海株の不安定な動きもあって売り越し姿勢を強めました。7月第2週は4382億円近く売り越しました。一方、個人投資家は5270億円の買い越しでした。7月9日の売買高の急増は、海外投資家の売りに個人投資家が買い向かった結果なのです。グローバルで運用する海外投資家は上海株が下げたことで日本株を売らざるをえなかったと察しますが、上海株をもともと持っていない個人投資家の懐具合が痛むことはありません。その後の株価上昇で買い方となった個人投資家の勝利です。この先、国内企業の強い業績を確認できれば、海外投資家は買い戻しに転じるでしょうし、今買いを見送っているGPIFの動向に関しても、日本郵政の上場承認が予想される8月後半以降がポイントとみています。信託銀行の売買全部がGPIFの売買ではないにしても、昨年後半以降、買い越しの多いときを平均すると月額6,500億円に膨らみます。日本郵政の上場成功のために、月額6,500億円で3兆円を年内で買い切ってしまうとすれば、逆算して8月後半から買い付けを始める可能性が高いとみています。年末に向け再びミニバブルが到来するかもしれません。

短期的な日経平均の上値メドは、2万1870円前後とみています。どうやってその値がでてきたかを簡単に解説して終わりにしたいと思います。そもそも相場はもみ合い放れの繰り返しなのです。日経平均は現在、もみ合い相場が続いていているわけですが、重要なのはどこの水準を中心にして動いているかということです。今の相場は2万円を中心に動いています。6月24日高値(2万952円)→7月9日安値(1万9115円)まで約1,837円程度下落しましたが、その下落の中心となるのは2万円であることがわかります(正確には2万33円)。少しマニアックな話をすると、あらかじめ、2万円をもみ合い相場の中心と定義づけておけば、7月9日の安値付近が押し目買いと判断できたはずなのです。今のもみ合い相場は仮に上に放れたとき、上値メドの2万1870円は、上げ下げするもみ合い相場の中で最も大きく動いた値幅(1,837円)を中心値の2万33円から、同じ幅だけ上昇させた値です。

東野幸利
株式会社DZHフィナンシャルリサーチ

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