8日の日経平均は638円安と今年最大の下げ幅を記録。9日は19,000円付近まで下げる場面がありました。ギリシャのユーロ圏からの離脱懸念に加え、中国政府の強力なテコ入れでも下げ止まらない中国株が、強く影響したとみています。6月に市場で注目を集めた、トヨタ自動車(種類株の発行)やソニー(公募増資の発表)の株価はダブルトップ(相場の天井を示すチャートパターン)を既に形成していたので、それに続く日経平均の2万円割れは調整が深まるサインと受け止めることもできそうです。

短期的にはまずは26週移動平均線(19,320円、7月8日現在)前後が下値メドとなりますが、問題は景気と企業業績がどうなっているかです。世界景気が落ち込まなければ、ギリシャ問題や中国株の暴落は一時的な弱材料となり、絶好の買い場になるでしょうし、逆に、ギリシャや中国株の暴落がクローズアップされつつも、実は景気が悪化し始めているのであれば、株価の当面の調整は避けられず、2007年高値(18,300円)を中心に18,500円-18,100円まで下落余地が広がる可能性が高まります。ITバブル当時は高値からいったん売りが落ち着くまで、5,000円程度下落しましたし、2007年高値からも3,000円前後下げた経緯がるため、今回もあっても不思議ではない調整幅です。

しかし、今回最も聞いて欲しいことは、今回の長い上昇相場で、日経平均は2007年高値(18,300円)を上回り、そこから半年も経たないうちに、ITバブル当時に付けた高値(20,833円)を上抜けました。この強気サインが発生したことを決して忘れてはいけません。どういうことかというと、ITバブル時代や2007年当時の高値からの調整は、1989年のバブル高値からの大きな調整局面にあったため、決して逆張りでは買ってはいけない押し目だったのですが、今回はバブル崩壊後の大きな下落相場が終了したことを確認(2007年高値を上抜けたこと)したあとなので、短期的に調整に移っていくとしても、そこは押し目買いの好機となるはずなのです。

そもそも、6月から大型株の動きに統一性が薄れていました。上昇相場では一般的に大抵の大型株は同じ方向を向いているケースが多いですが、大型株の中でも下げ渋っていたものと、下落に転じたものに分かれていたことが気掛かりでした。それは売買シェアで60%超を占める海外投資家が6月に入り日本株を売り越したことが要因なのですが、キヤノンやファナックなどの動きをみれば明らかで、売りは輸出大型株にやや偏っていたようです。逆に足元の下落は、銀行やノンバンク、保険など内需大型株の下げが目立ちます。ようするに、海外投資家と思われる内需大型株への売りがいつ止まるかが焦点なのです。先に輸出大型株を売って、そのあとで内需大型株を売っているとしたら、先に安値を付けるのは輸出大型株の方。トヨタ自動車でいうところの、7,500-7,600円付近が下値のポイントになるとみています。大型株全体の力で指数が持ち直すタイミングを狙うには、次に内需大型株が安値を付けうるところを判断し、捉えればよいでしょう。例えば、三菱UFJでいうところの、770円前後はどうか。中国株の中間反騰(大きな下落相場の途中での反発)で、目先は日経平均が持ち直す場面はあるかもしれませんが、慌てずじっくり押し目を待つスタンスが重要です。

東野幸利
株式会社DZHフィナンシャルリサーチ

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