最近、米国株が下げても日本株は同じように下げずに、上昇することがありました。3月本決算企業の期末を前に「配当狙いの買い」が入ったことや、大口資金を扱う年金(クジラ)による「爆買い」、海外投資家による「大型株買い」が主な要因と思われます。

上場企業が株主に還元する配当を増やしています。報道によると、2015年3月期に増配か、復配する上場企業は全体の3割に達し、配当総額は7兆4000億円と前期に比べ約1割増え、2年連続で最高を更新するようです。日銀による金融緩和で低下した国債利回りに比べ、配当利回りの高い個別株に対する優位性を意識しはじめたからでしょう。しかも、バブル崩壊以降の株価が下落する低迷相場の中では、「どうせ配当をとっても、株価が下がれば投資資金が目減りする」という感覚が浸透していましたが、今は株価上昇による値上がり益も期待できる、という意識に変わってきたことが大きいかもしれません。これもある意味「資産効果」です。これから益々、増配機運が高まってくれば、3月に向けてのアノマリー性がより強く出るようになるかもしれませんね。

年金による「爆買い」に関しては、前回お話したように「賃上げ(ベア+定期昇給)」なども関係しているようです。ただ、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の2014年12月末時点での日本株の資産構成割合は19.8%なので、25%までの増加余地はあるものの、遅かれ早かれ、上限近くまで買ってしまうとどうなるか、を考える時期に来ているような気もします。筆者のある信頼できるストラレジストも最近話されていましたが、ある時点で公表されるGPIFの日本株の構成割合が上限に近づいたことが判明した時、それを逆手にヘッジファンドが売りを仕掛けてくる可能性があると。つまり、株価を下げさせることによって、「GPIFにこれ以上買える余地はないため、株価は上がらない!」と思い込ませ、他の売りを誘いこむ戦術です。筆者もそれはいずれどこかでありえることだと思っています。「賃上げ」は年金による株式へのシフトを早める効果がある半面、上限に達する時期が前倒しになる点に注意しないといけません。

海外投資家は年初に売り過ぎた日本株を買い戻してます。余剰資金をため込まずに株主に配分する姿勢やコーポレートガバナンス(企業統治)などを含め、企業行動の変化に着目しているようです。それに加え、政府は、企業の輸出や生産の増加、収益の向上を理由に、3月の月例経済報告で景気判断を8カ月ぶりに上方修正しました。4月下旬から始まる3月決算の業績や来期の見通しに対する期待感が、株価を一段と押し上げる要因になるかが、6月ごろまでの見どころといいますか、株価上昇のカギでしょう。一方で、ドル高による米国企業の収益の落ちこみを心配もしないといけません。今は日本株の優位性がクローズアップされていますけど、米国株が下げ出すと、海外投資家はそう簡単には日本株を買い増すことはしないでしょう。

以上、今年の3月は、「配当狙いの買い」、「年金買い」、「海外投資家の買い」が例年以上に重なっていることが特徴です。4月以降も大口投資家による買いが続けばよいのですが、先日お話しました「日経平均の83か月周期」によって4月に反動が起きれば、予想以上に大きいかもしれませんので、注意が必要です。

筆者が足元で気になるのは、

1)ギリシャのCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)がゆっくり上昇していること(上昇は国の財務状況や信用力が低下しリスクが高まっていることを意味する)、

2)米VIX指数(恐怖指数)が十分なところまで下げ、上昇余地が高まってきたこと(上昇は市場の混乱を意味することが多い)

3)米国のダウ輸送株指数が軟調なこと(景気減速局面では輸送株が先行して下落する)

です。

この先、注意すべきタイミングは、米3月の雇用統計が発表になる4月3日(金)です。しかもこの日は米国株式市場が「グッド・フライデー」で休場となるため、先に雇用統計の結果を織り込むことになる、東京市場が間違った反応を示すことがありえます。
そこで、今からの対応策を最後にお話して、終わりにします。日経平均が15年以来の高値を更新する中でも、忘れてはいけないのが新興市場です。特に、東証マザーズ指数は昨年の夏場以降ずっと低迷が続いていますが、例えば、4月中に「爆上げ」してもおかしくない雰囲気が出てきたように思います。日経平均の「2万円」超えを追っかけるよりも、ひとまずはマザーズ市場に切り替えをお勧めします。手っとり早いのは、マザーズ市場に連動する上場投資信託(ETF)を買うのが面白いでしょう。

東野幸利

株式会社DZHフィナンシャルリサーチ

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