賃上げ(ベア)」報道が毎日のように新聞紙上を賑わしています。日本株の強さをみていると、賃上げは国内の景気回復の裏返し、これもアベノミクス相場の流れか、といったような雰囲気です。それともう一点重要なのは、賃金の上昇はGPIF(クジラ)の年金運用資産(137兆358億円、2014年12月末)のうち、リスク資産への投資を促す効果があるということ。
年金改革で基本ポートフォリオは国内株式だったら全体の25%(±9%)まで引き上げる、外国株式も同25%(±8%)まで引き上げる、と決まっていますので、その前後の許容範囲を超えて組み入れることはないのですが、年金運用で課されている厚労省からのノルマは、「賃金上昇率+1.7%」といわれています。なので、賃金上昇率がアップすると、年金資金はリスク資産を増やさないとパフォーマンスが追いつきません。2014年12月末で株式の資産構成割合は19.8%なので、25%までの増加余地は遅かれ早かれまだ十分あるのですが、「賃上げ」報道が年金資金による株式へのシフトを早める効果がある、足元の日本株の強さはそういった要因があるのかもしれません。
さて、以下はおまけです。3月本決算企業の配当に伴う権利落ち日が来週に到来します。この時期になると毎年話題になるのが「配当再投資の買い」です。「配当再投資の買い」とは、年金資金などを配当込みベースで運用・管理する信託銀行などが、運用ポートフォリオに占める株式資産の配当落ちによる目減りを補うために買いを入れることです。配当金を実際受け取るのは2~3カ月あとになりますので、目減り分相当額を先物買いをして埋めておくわけです。9月の最終週なども同じです。
過去3月最終週の信託銀行の先物手口(TOPIX先物のみ)は以下の通り。
2009年 2091億円買い越し(3/23―3/27)
2010年 2426億円買い越し(3/29―4/2)
2011年 1982億円買い越し(3/28―4/1)
2012年 2095億円買い越し(3/26―3/30)
2013年 1088億円買い越し(3/25―3/29)
2014年 2595億円買い越し(3/24―3/28)
すべての運用機関が同じタイミングで買いを入れるというわけではないですが、ざっくり感でいきますと、権利付き最終日(今年は3/26)の引けにかけて買いを入れる場合もあるでしょうし、落ち日、落ち日の翌営業日などもあるでしょう。今年の配当落ち分はTOPIX で11.77P程度と見込まれています。3/18現在のTOPIX(1582P)の0.74%になりますので、TOPIXに連動する資産が世の中に26兆円程度あるとした場合、1924億円(26兆円×0.74%)程度が目減りする計算になるため、その分が買い需要になります。TOPIX先物ベースで換算すると12,000枚程度の買い需要になります。下落局面では一時的な下支え要因にしかならないですが、今のように高値更新後のトレンドフォローのような環境では、結構なインパクトになると考えてもよさそうです。
ただ、以前も書きました通り、短期トレーダーには関係してくるでしょうが、長期の投資家には単なるきやすめ程度にしかなりません。買い需要ばかり皮算用しても、それ以上の売り需要があれば株価は上昇しません。
東野幸利
株式会社DZHフィナンシャルリサーチ